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文献詳細

雑誌文献

検査と技術33巻11号

2005年10月発行

文献概要

増刊号 一線診療のための臨床検査

序 一線診療のための臨床検査

著者: 菅野治重1

所属機関: 1高根病院

ページ範囲:P.991 - P.994

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はじめに

 臨床検査の外注化が恐ろしいほどの速度で進んでいる.このまま検査の外注化が進めば日本の病院から臨床検査室が消滅する日も近いと思われる.はたしてこれでよいのであろうか.

 2001年(平成13年)の厚生労働省の「医療法の一部を改正する法律等の施行について」では,必置施設の緩和の項で,「臨床検査施設について,検体検査の業務を委託する場合にあっては,当該施設に係わる施設を設けないことができることとするが,検体検査の業務を外部委託する場合にあっても,休日・夜間や救急時の体制確保されていること.」という条項が盛り込まれた1).これを契機に臨床検査の外注化が急速に進んだ.最近は厚生労働省の直轄病院であった旧国立病院において検査の外注化が目立つが,これも既定の路線に沿ったものであろう.検査の外注化の目的は何か.病院の検査収益の増収か,臨床検査技師(以下,検査技師)のリストラか,検査センターを儲けさせるためか,恐らくそのすべてであろう.当面は厚生労働省の役人の検査センターへの天下りを厳しく監視する必要がある.

 病院から検査室がなくなった場合,患者が不利益を蒙らないで済むのであろうか.迅速な検査は病院内に検査室があり,有能で献身的な検査技師がいて初めて可能になる.特に筆者の専門の感染症では患者情報があって初めて検査が成り立つため,医師と検査技師とのコミュニケーションが絶対必要であり.また微生物は生き物であるため検体は保存できないことから,感染症の病原体診断のための微生物検査は外注化できない検査である.

 しかし残念なことに検査の外注化に対する医師からの批判は予想されたほど多くない.これはこれまで病院検査室で行われてきた検査の品質が,検査センターでの検査の品質と大差ないことの証明とも思える.この点を真剣に反省することから再出発する必要がある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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