icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術33巻11号

2005年10月発行

文献概要

コラム

性病大国日本

著者: 小野寺昭一1

所属機関: 1東京慈恵会医科大学感染制御部

ページ範囲:P.1041 - P.1041

文献購入ページに移動
性病(venereal disease,VD)はかつてわが国では花柳病と呼ばれていた.ヨーロッパでの呼称であるVDの意味はヴィーナスの病気であったことを考えれば,わが国における花柳病という呼びかたには,歓楽街で遊女や娼婦などと交渉があった特殊な人々が罹る病気とのニュアンスが感じられる.性病という呼称がみられるのは,1921年に当時の花柳病予防協会が性病予防協会(現在の「性の健康医学財団」)と改名されたころからのようである.そのころには既に性病は花柳界に関連した特別の病気ではなく,そこで罹患した男性によって持ち込まれ,一般家庭にも拡がっていく病気と認識されていたのであろう.かつての性病とは梅毒,淋疾,軟性下疳,鼠径リンパ肉芽腫(第4性病)の四つの疾患を指しており,いずれも感染初期には性器を中心に分泌物や潰瘍,硬結など明らかな病変を呈する疾患群であった.

 一方,現在は性病に代わって性感染症(sexually transmitted diseases,STD あるいはsexually transmitted infections,STI)と呼ばれるようになり,20を超える疾患がその範疇に含まれるとされている.これらのSTDのなかには必ずしも性器に病変をつくらず,感染の初期にはほとんど無症状である疾患も多く存在する.diseaseには至らずinfectionのままで長い経過を示す疾患も多いことから,今後は世界的にもSTIという表現に変わっていくものと思われる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?