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増刊号 一線診療のための臨床検査 第I章 総論―臨床編 4. 消化器疾患の検査
3)出血
著者: 濵中裕一郎1 末廣寛1 日野田裕治1
所属機関: 1山口大学医学部特殊専門領域腫瘍病態学
ページ範囲:P.1050 - P.1053
文献購入ページに移動消化器の出血性疾患は消化管(口腔から肛門まで)と肝・胆・膵に大別して考える.消化管出血に特徴的な症候は吐血1)や下血2)であり,肝・胆・膵疾患では腹腔内出血を伴うことがある.
吐血は血液成分を含む嘔吐を指し,通常は十二指腸と空腸の境目〔トライツ靱帯(Treitz ligament)〕より口側(上部消化管)に出血源が存在することが多い.吐物中の血液は出血直後では新鮮血色であるが,時間の経過に伴い胃内で酸化されると褐色(コーヒー残渣様)を呈する.
一方,下血は血液の混じった便の排出を指し,消化管のいずれの部位からの出血でもみられる症候である.便の色調や性状により鮮血便や粘血便,黒色(タール)便などと称される.出血の程度は大量出血によりショックに陥るものから慢性の貧血症状を伴い便潜血反応で初めて検出される程度のものまでさまざまである.頻度的には消化管出血が大半を占め,上部消化管では消化性潰瘍(胃潰瘍,十二指腸潰瘍)が最も多く,急性胃粘膜病変などがそれに続く.下部消化管では大腸癌,ポリープなどの頻度が高い.これに対し肝腫瘍の破裂,胆道出血や急性膵炎による出血などは比較的稀である(表1,図).そのほか血液疾患,膠原病など全身性の疾患に伴う消化管出血にも留意しなければならない.
本稿では出血をきたす比較的頻度の高い消化器疾患を中心に第一線の診療に必要な疾患の概要と検査の組み立てについて述べる.
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