文献詳細
増刊号 一線診療のための臨床検査
第I章 総論―臨床編 8. 膠原病の検査
1)SLE(全身性エリテマトーデス)
著者: 熊谷俊一1 河野誠司1 小柴賢洋1
所属機関: 1神戸大学大学院医学系研究科生体情報医学講座臨床病態・免疫学分野
ページ範囲:P.1091 - P.1096
文献概要
SLE(systemic lupus erythematosus,全身性エリテマトーデス)の病因はいまだに不明であるが,ある遺伝的因子を有するヒトになんらかの環境因子が作用し発症すると考えられる.遺伝病ではないが,家族での集積やHLAなどの検索(欧米ではDR2やDR3などが多い)が報告されている.日光暴露や妊娠分娩を契機に発症する症例も多く,紫外線・ホルモン・感染・寒冷・ストレスなどが環境因子として重要で,これらは発症後の疾患増悪因子でもある1).ヒドララジンやプロカインアミドなどの薬剤服用中の患者にSLE様の症状をきたすことがあり,薬剤性ループス様症候群と呼ばれる.
SLEなどの自己免疫疾患では,自己抗体産生細胞や自己傷害性T細胞などの自己反応性リンパ球が病態形成に重要な役割を担っている(図1).これらの自己反応性リンパ球は正常では,除去されるか活性化されないようになっている(トレランス).さまざまな環境因子はトレランスを破綻させ,SLEでは自己反応性B細胞の活性化を誘導し,産生された抗DNA抗体はDNAと免疫複合体を形成し腎臓に沈着し,ループス腎炎を引き起こす(II型アレルギー).また,抗赤血球抗体は赤血球と反応し溶血性貧血をもたらす(III型アレルギー).このようにSLEの病態は,①免疫異常,②アレルギー反応や炎症,③その結果としての臓器障害の三つのステップより成る2).
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