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文献概要
疾患と検査値の推移
結核―治療と喀痰検査成績の推移を中心に
著者: 桑原克弘1 和田光一1
所属機関: 1国立病院機構西新潟中央病院内科
ページ範囲:P.263 - P.267
文献購入ページに移動わが国では結核は診断法や治療の進歩,栄養状態の改善とともに急速に減少傾向にあったが,1970年代以降,罹患率の減少が鈍化していた.1997年には43年ぶりに罹患率が増加に転じて再興感染症として注目された.2002年の罹患率は25.8人/10万人 で感染性の高い塗抹陽性患者は9.4人/10万人 と報告されている.その後再び減少傾向にあるが欧米先進国の罹患率が5人/10万人 程度であることと比較するといまだに結核の中進国と位置づけられる.世界的にはアフリカやアジアでのヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus,HIV)感染関連の結核の増加が大きな問題となっている.
日本の結核の問題点
結核の罹患率が減少しない理由として種々の基礎疾患を持った高齢人口の比率・絶対数の上昇とともに,増加している高齢者結核の問題がある.さらに社会全体の結核の認識が薄れ患者側では受診の遅れ(patient's delay),医療者側では結核の診療経験不足から診断に時間がかかるという問題(doctor's delay)も結核の減少が鈍化していた要因とされている.近年直接観察下治療(DOTS:directly observed treatment,short course)と呼ばれる標準短期治療を入院時から治療終了まで完遂させる包括的試みがなされ,再発率の低下,耐性結核の減少,罹患率の減少が期待されている.
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