icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術33巻4号

2005年04月発行

文献概要

疾患と検査値の推移

下垂体卒中

著者: 三木伸泰1 小野昌美1 関敏郎1

所属機関: 1東京女子医科大学病院第二内科(内分泌センター内科)

ページ範囲:P.353 - P.357

文献購入ページに移動
下垂体卒中とは

 脳卒中は下垂体にも発症する.これを下垂体卒中(pituitary apoplexy)と呼ぶ.本症の病態は,下垂体に発生した腺腫,嚢胞に起こる出血,梗塞,または出血性梗塞である.下垂体腫瘍に出血を伴うことは稀ではないが多くは無症候性である.症候性の下垂体卒中は,下垂体の急激な膨張により起こる局所的な脳神経圧迫症状を主要徴候とする.多くの場合下垂体ホルモン欠落症状を伴い,内分泌救急症(endocrine emergency)の一つに数えられる.下垂体卒中患者のほとんどは発症時に下垂体疾患に罹患していることを自覚していない.したがって,下垂体卒中がほとんどの患者の初発症状になる.

頻 度

 下垂体腫瘍は出血しやすいのが特徴で,出血の頻度は他のタイプの脳腫瘍よりも5.4倍も多い.Bonickiらの報告1)によると,799例の下垂体腫瘍のなかで,39例の下垂体卒中症例(23例は手術,16例は非手術症例)をみた.しかし,この39例を除く760例の手術症例のなかで,90例に臨床的に無症候性の下垂体卒中を組織学的に確認している.したがって,臨床症状を呈する症候性の下垂体卒中は比較的稀(約5%)であるが,無症候性すなわちサブクリニカル(subclinical)な下垂体卒中は約16%程度の下垂体腫瘍に合併すると推測される.Fraioliらの453例の下垂体腫瘍手術症例の報告2)では,出血が9.9%,そのうち約1/3で卒中症状を呈した.発症年齢は10歳未満から80歳代と広汎に分布し,発症頻度には明確な男女差はないようである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら