文献詳細
文献概要
どうする?パニック値 生化学
2.血中乳酸濃度高値
著者: 田港朝彦1
所属機関: 1香川大学医学部臨床検査医学講座
ページ範囲:P.370 - P.371
文献購入ページに移動乳酸はαヒドロキシ酸の一つで,血液中では一価の陰イオンとして存在する.乳酸は骨格筋,脳および赤血球でのグリコーゲン代謝に始まる解糖系代謝経路の最終産物として嫌気的にピルビン酸からLDH(乳酸脱水素酵素)の作用により産生される.乳酸の主な生成臓器は,骨格筋,赤血球,脳,皮膚,腸管であり,肝臓,腎臓で代謝され,体外へ排泄されない.正常な代謝回転が保たれている場合,筋肉において,嫌気的条件下でグルコースから生成した乳酸は,その約30%が肝臓に運ばれ,糖新生系の基質として利用され,再びグルコースへと変えられる.このようなグルコースと乳酸の循環をコリ回路(Cori cycle)という.乳酸が過剰に筋肉に蓄積すると組織のpHを低下させ,いわゆる「筋肉疲労」を引き起こす.また,血液中の乳酸濃度が高くなると血液の緩衝力を超え,アシドーシスとなりpHが低下する(乳酸アシドーシス).コリ回路はそれらを回避するための巧妙な生理的機構である(図).
好気性の状態ではピルビン酸はピルビン酸脱水素酵素とビタミンB1によりアセチルCoAとなり,オキザロ酢酸とともにクエン酸回路に入りATPを産生する.また,クエン酸回路のα-ケトグルタール酸からサクシニルCoAへの産生にはα-ケトグルタール酸脱水素酵素とビタミンB1が必要である(図).高カロリー輸液療法を行う際グルコースのほかに,フルクトース,キシリトールが用いられることが多い.フルクトースは,肝細胞に入るとグルコースより速やかにリン酸化されてフルクトース-1-リン酸を経て解糖経路に入る.グルコース,フルクトースともに解糖経路に入り,いずれもグリセロアルデヒド-3-リン酸を経てピルビン酸となり,ミトコンドリア内に入る.高カロリー輸液の対象となる重症の患者に,ピルビン酸の代謝に必要なビタミンB1の補給なしで高カロリー輸液が行われると,ピルビン酸はアセチルCoAへ代謝されずに増加し,乳酸の産生増加をきたす.
好気性の状態ではピルビン酸はピルビン酸脱水素酵素とビタミンB1によりアセチルCoAとなり,オキザロ酢酸とともにクエン酸回路に入りATPを産生する.また,クエン酸回路のα-ケトグルタール酸からサクシニルCoAへの産生にはα-ケトグルタール酸脱水素酵素とビタミンB1が必要である(図).高カロリー輸液療法を行う際グルコースのほかに,フルクトース,キシリトールが用いられることが多い.フルクトースは,肝細胞に入るとグルコースより速やかにリン酸化されてフルクトース-1-リン酸を経て解糖経路に入る.グルコース,フルクトースともに解糖経路に入り,いずれもグリセロアルデヒド-3-リン酸を経てピルビン酸となり,ミトコンドリア内に入る.高カロリー輸液の対象となる重症の患者に,ピルビン酸の代謝に必要なビタミンB1の補給なしで高カロリー輸液が行われると,ピルビン酸はアセチルCoAへ代謝されずに増加し,乳酸の産生増加をきたす.
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