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文献詳細

雑誌文献

検査と技術33巻7号

2005年07月発行

文献概要

今月の表紙

百聞は一見に如かず・19 名付け親の多いリンパ腫

著者: 松谷章司1

所属機関: 1NTT東日本関東病院病理診断部

ページ範囲:P.636 - P.636

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名前も多いし,経緯も変わっているリンパ腫として血管免疫芽球性T細胞性リンパ腫(angioimmunoblastic T-cell lymphoma,AILT),IBL様T細胞リンパ腫(IBL-like T-cell lymphoma)という疾患がある.これは,歴史的に相前後して多くの研究者たちが同様病態をそれぞれ独自性を主張して発表したため実に多くの名称が残っている病変に由来する.免疫芽球性リンパ節症(immunoblastic lymphadenopathy,IBL),異常蛋白血症を伴う血管免疫芽球性リンパ節症(angio-immunoblastic lymphadenopathy with dysproteinemia,AILD),血管免疫芽球性リンパ節症(angioimmunoblastic lymphadenopathy,AIL),リンパ肉芽腫症X(lymphogranulomatosis X),免疫異形成症(immunodysplastic disease),リンパ異形成症候群(lymphodysplastic syndrome)など.多クローン性の免疫グロブリン異常を伴っていることが多く,組織像も単一な細胞の増殖ではなく,多彩なリンパ球系細胞増生,好酸球浸潤,腫大した内皮細胞の血管増生などの所見から,ただちに単クローン性の細胞増殖による腫瘍とは考えにくかったため,当初,反応性,良悪性境界あるいはリンパ腫前段階の病変と考えられていた.しかし,T細胞受容体遺伝子(T cell receptor gene,TCR gene)の再構成を示す症例が多いことから,多くはT細胞リンパ腫であることがわかっている.そこで,血管免疫芽球性T細胞性リンパ腫(AILT)などの長々しい名称が用いられている.年余にわたりリンパ節腫大が出没する経過を有する症例もあり,本疾患が前段階の病変から推移するのか,de novoに発症するのかは意見の分かれるところであるが,診断時には全身リンパ節腫大と後述する症状を伴っており,T cell lymphomaの証拠が認められることが多い.

 組織像はリンパ濾胞/胚中心の減少,萎縮あるいは痕跡的な残存,高内皮細胞性細静脈の樹枝状増生,免疫芽球の増殖,小型リンパ球,類上皮細胞集塊,形質細胞や好酸球の浸潤が見られる.好酸性物質の沈着所見は欧米に比してわが国の症例では少ない.リンパ球様細胞の中に淡明で広い細胞質とくびれた小型核を有する細胞(淡明細胞:clear cell,pale cell)の増生巣が認められることも特徴の一つに挙げられる.患者は男性,中高齢者に多く,発熱,皮疹,全身リンパ節腫脹,肝脾腫,自己免疫性溶血性貧血,多クローン性高γグロブリン血症を呈し,予後は悪く,感染などで死亡することが多い.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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