icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術33巻9号

2005年09月発行

文献概要

ラボクイズ

8月号の解答と解説

著者: 吉野一敬1

所属機関: 1北海道立苫小牧病院検査科

ページ範囲:P.831 - P.831

文献購入ページに移動
【問題1】 解答:②多包条虫幼虫

解説:Echinococcus multilocularis(多包条虫)の多包虫(原頭節)です.エキノコックスでヒトから検出されるのはこの多包虫(原頭節)です.エキノコックスの発育は虫卵,幼虫,成虫の三段階で,野生での感染では「中間宿主」である野ネズミがまずキツネなどの「終宿主」から排泄されたエキノコックス卵を食べ感染します.野ネズミはキツネに捕食され,エキノコックスは終宿主であるキツネの体内に入ります.そこで多包虫から成虫の多包条虫になります.寄生虫の場合「中間宿主」と「終宿主」とをしっかり区別して覚えてください.キツネの体内で成虫となったエキノコックスは多くの虫卵を排泄しますが.このエキノコックス虫卵をキツネやイヌが摂取しても他のキツネやイヌがエキノコックスに感染することはありません.ヒトに感染した多包虫(原頭節)がヒトへと感染することはありません.エキノコックスは最初肝臓に嚢胞を造ることが多いですが,その後まるで癌のようにどこにでも転移します.

 今回の症例は縦隔洞に嚢胞ができた例ですが,この後,この患者さんは左膝関節からも多包虫(原頭節)が検出されています.このようにエキノコックス症は多包虫(原頭節)がどこからでも出てきますので,検査担当者はつねにこのことを頭の片隅に置いておくことが大事です.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?