文献詳細
けんさアラカルト
―異常値となるメカニズム 3.脂質検査異常値データ・2―脂質検査項目異常値とデータチェック法
著者: 大井絹枝1
所属機関: 1三重大学医学部臨床検査医学講座
ページ範囲:P.844 - P.846
文献概要
健康診断や一般診療のスクリーニング検査としての血清脂質検査では,自動分析機により簡便で短時間に大量処理が可能であることから,総コレステロール(TC),トリグリセリド(TG),HDL(high density lipoprotein,高比重リポ蛋白質)-コレステロール(HDL-C)の3項目が測定されているのが現状である.LDL(low density lipoprotein,低比重リポ蛋白質)-コレステロール(LDL-C)も直接法が開発され自動化が可能になったがTC,HDL-C,LDL-Cのうち保険上算定されるのは2項目のみであり,F式(Friedewaldの換算式:LDL-C=TC-HDL-C-TG/5,TG400mg/dl以下に適用)により代用できるためLDL-Cの普及は遅れている.脂質検査では,TC,HDL-C,LDL-Cは食事の影響を無視できるが,TGは食事の影響が大きく特に脂質異常者では顕著であるため12~14時間絶食後採血した検体を用いる.
スクリーニング検査で異常が出ればリポ蛋白質分析を行うが,日常検査では処理能力と情報量から判断して電気泳動法で脂質の全体像をみる方法が最適である.電気泳動法の支持体としては通常アガロースゲルまたはポリアクリルアミドゲル(polyacrilamide gel,PAG)を使用する.
さらに詳しく脂質異常を調べるには,アポ蛋白質,Lp(a),遊離脂肪酸,リポ蛋白質代謝酵素などを定量する.また,酸化LDL,小粒子LDL,AGE(advanced glycation end products,糖化反応最終産物)など変性LDLの原因となる因子を定量することによりLDLの質的異常も把握できる.原発性脂質異常症では,家族歴と遺伝子検査が必要な症例も認められる.
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