icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術34巻1号

2006年01月発行

文献概要

Laboratory Practice 血液:末梢血血液像における鑑別困難な血球・1

芽球

著者: 東克巳1

所属機関: 1東京大学医学部附属病院検査部

ページ範囲:P.48 - P.52

文献購入ページに移動
はじめに

 末梢血血液像(血液像)に必要な血液量はわずか5μlである.わずか5μlの血液から得られる情報にはどのようなものがあるだろうか.適切な標本から得られる情報には,おおよその白血球数や血小板数,あるいは赤血球形態の観察より貧血状態,破砕赤血球観察より血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation,DIC)の推測などがある.また,血液像は白血病細胞検出による造血器腫瘍やマラリア検出による寄生虫感染症など診断と直結する情報を提供してくれる.わずか5μlの血液から得られるこの情報を的確に把握するにはかなりの経験と知識とが必要である.

 塗抹標本上の幼若細胞あるいは芽球の鑑別・検出は造血器腫瘍を含む血液疾患にとって最も重要で意義深い.しかし,最近は血液腫瘍内科など専門診療科に限らず種々の診療科で抗がん剤投与時の好中球減少に伴う予防投与としてG-CSF(granulocyte-colony stimulating factor,顆粒球コロニー刺激因子)などのサイトカイン療法が行われるようになり末梢血標本に幼若細胞あるいは芽球の出現頻度が高くなってきている.

 血液検査室で塗抹標本を利用する検査は血液像検査以外に骨髄塗抹標本検査,すなわち骨髄像検査がある.骨髄像検査は造血器疾患など精査を目的に依頼されてくるので目標が絞りやすい.しかし,血液像検査は骨髄像検査のように情報が多いなかでの検査とは異なるため熟練を要する.血液像検査は骨髄像検査と同等,あるいはそれ以上の経験と知識とが必要である.

 本稿では日常,末梢血血液像検査を観察していて鑑別困難な血球に遭遇した場合の観察方法などを解説する.これからシリーズでこの企画を進めるが,第一回は「芽球」を取り上げた.

参考文献

1) 三輪史朗,渡邊陽之輔:血液細胞アトラス.文光堂,2004
2) 阿南建一,亀山孝則,須田正洋:形態学からせまる血液疾患.近代出版,1999
3) 寺田秀夫(監):血球カラーアトラス.武藤化学,2001

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?