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文献詳細

雑誌文献

検査と技術34巻10号

2006年10月発行

文献概要

Laboratory Practice 教育

論文の読みかた―本物を見つける読みかた

著者: 鈴木優治1

所属機関: 1埼玉県立大学保健医療福祉学部健康開発学科検査技術科学専攻

ページ範囲:P.944 - P.945

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独そう的文献は一流誌だけにあるのか

 先頃,某新聞に特集された「国家戦略を考える」という連載のなかで,科学の進歩に寄与する世界の雑誌という報告が目に留まった.そこには,最も影響力のある雑誌として“Nature",“Science”などの名前が挙がっていた.英国の科学週刊誌である“Nature”では,毎週投稿されてくる200編近い論文は編集委員会により最終的には18編ほどの論文に絞られ,毎週掲載されるが,残った投稿論文はすべてボツにされるという.ボツにされた論文の多くはたぶん他の雑誌に投稿・掲載されると考えると,価値ある論文の多くは一流誌である“Nature”以外の雑誌に掲載されることになる.

 一方,研究者のなかには,却下される恐れが高く,同業者による盗用の危険がある一流誌への投稿を避ける者もいるという.クォークを発見したMurray Gell-Mannはこの論文を欧州の新しい雑誌である“Physics Letters”に投稿している1).一方,同じ発見に到達したGeorge Zweigは米国の一流誌の“Physical Review Letters”への投稿に固執したが,却下されたうえ,論文そのものの公表を断念してしまった.クォークの発見者はMurray Gell-Mann,George Zweigとなっているが,Zweigの論文は正式には発表されていない.また,Solomon A. BersonとRosalyn S. Yalouのラジオイムノアッセイに基づくインスリン測定法に関する論文は“Science”に投稿されたが,ただちに却下されたため治療研究誌で公表された2)

 このように一流誌だけに独そう的な論文が掲載されるわけではない.

参考文献

1) Riordan M:クォーク狩り(青木薫訳).吉岡書店,京都,pp117-146,1991
2) 丸山工作:新インスリン物語.東京化学同人,pp45-59,pp113-120,1992
3) Segrè EG:X線からクォークまで(久保亮五,矢崎裕二訳).みすず書房,pp19-21,1982
4) Shapiro G:創造的発見と偶然(新関暢一訳).東京化学同人,pp161-182,1993
5) 高松秀機:創造は天才だけのものか.化学同人,京都,pp201-216,1993

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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