文献詳細
文献概要
増刊号 新しい臨床検査・未来の臨床検査 総論
1 遺伝子検査の新しい流れ
著者: 舩渡忠男1
所属機関: 1京都大学医学部保健学科検査技術科学専攻情報理工医学講座
ページ範囲:P.1000 - P.1006
文献購入ページに移動 はじめに
医療はポストゲノム時代といわれ,遺伝子に基づくオーダーメイド医療に対する期待はますます高まっている.遺伝子研究の進歩は,遺伝子検査として臨床の場で多くの恩恵をもたらすものとおおいに期待されている.遺伝子検査は研究段階にあるものから感染症のように既にキット化されているものまで,項目またそれらを実施する施設は拡大している.しかし,臨床検査のうち遺伝子検査は当初の期待に反して,明らかに伸び悩んでいるのが現状である.その原因としては,遺伝子検査の保険適応がまだ一部の感染症に限られており,諸経費がかかるなど採算ベースに載りにくいことが大きいと考えられる.そのため病院検査室では積極的な初期投資および導入拡大はなされず,大手ラボや大学の研究室に検査を依頼するケースが多い.さらに,臨床診断として厳しい管理の下,精度・品質を保証するという視点に欠けていたことは否めない.これは仕様の十分な標準化がされてこなかったためと分析している.遺伝子検査は遺伝子市場拡大の観点からまさしく再考を行う時期に来ているといえる.臨床検査分野で遺伝子検査を広く普及させるには臨床的意義が見いだされるものでなくてはならず,同時に将来それを担う人材の育成と,診断薬と自動化技術の開発導入が急務である.
そこで,遺伝子検査を進歩させるには,現状を十分に把握し,あらゆる問題点を抽出して,精度を保証するために必須な方策(ガイドラインの作成や技術の向上)を行い,臨床検査全体の活性化につながるいっそうの努力をすることが必要である.さらに,臨床の現場に新しい検査技術を積極的に導入する機運を促し,それらに関する有用な情報を診療に提供できればより未来に開けた遺伝子検査の拡大につながるものと考える.
これからの遺伝子検査は,遺伝子解析の研究レベルの議論だけではなく,技術開発や市場拡大を視野に入れ,産業界や診療現場との積極的な情報交換および取り組みから発展させていき,実学としての遺伝子検査学を臨床検査および日常診療の中で認知させていく必要があろう.そのためには常に具体的な戦略を提示し,実行し展開していくことが重要である.
医療はポストゲノム時代といわれ,遺伝子に基づくオーダーメイド医療に対する期待はますます高まっている.遺伝子研究の進歩は,遺伝子検査として臨床の場で多くの恩恵をもたらすものとおおいに期待されている.遺伝子検査は研究段階にあるものから感染症のように既にキット化されているものまで,項目またそれらを実施する施設は拡大している.しかし,臨床検査のうち遺伝子検査は当初の期待に反して,明らかに伸び悩んでいるのが現状である.その原因としては,遺伝子検査の保険適応がまだ一部の感染症に限られており,諸経費がかかるなど採算ベースに載りにくいことが大きいと考えられる.そのため病院検査室では積極的な初期投資および導入拡大はなされず,大手ラボや大学の研究室に検査を依頼するケースが多い.さらに,臨床診断として厳しい管理の下,精度・品質を保証するという視点に欠けていたことは否めない.これは仕様の十分な標準化がされてこなかったためと分析している.遺伝子検査は遺伝子市場拡大の観点からまさしく再考を行う時期に来ているといえる.臨床検査分野で遺伝子検査を広く普及させるには臨床的意義が見いだされるものでなくてはならず,同時に将来それを担う人材の育成と,診断薬と自動化技術の開発導入が急務である.
そこで,遺伝子検査を進歩させるには,現状を十分に把握し,あらゆる問題点を抽出して,精度を保証するために必須な方策(ガイドラインの作成や技術の向上)を行い,臨床検査全体の活性化につながるいっそうの努力をすることが必要である.さらに,臨床の現場に新しい検査技術を積極的に導入する機運を促し,それらに関する有用な情報を診療に提供できればより未来に開けた遺伝子検査の拡大につながるものと考える.
これからの遺伝子検査は,遺伝子解析の研究レベルの議論だけではなく,技術開発や市場拡大を視野に入れ,産業界や診療現場との積極的な情報交換および取り組みから発展させていき,実学としての遺伝子検査学を臨床検査および日常診療の中で認知させていく必要があろう.そのためには常に具体的な戦略を提示し,実行し展開していくことが重要である.
参考文献
1) 診療点数早見表.2006年4月版,医学通信社,2006
2) Spitaleri S, Piscitello D, Di Martino D, et al:Experimental procedures comparing the activity of different Taq polymerases. Forensic Sci Int 146(Suppl):S167-169,2004
3) Miterski B, Kruger R, Wintermeyer P, et al:PCR/SSCP detects reliably and efficiently DNA sequence variations in large scale screening projects. Comb Chem High Throughput Screen 3:211-218,2000
4) Siqueira JF Jr, Rocas IN, Rosado AS. Application of denaturing gradient gel electrophoresis (DGGE) to the analysis of endodontic infections. J Endod 31:775-782,2005
5) Ramsey SD, Veenstra DL, Garrison LP, et al:Toward evidence-based assessment for coverage and reimbursement of laboratory-based diagnostic and genetic tests. Am J Manag Care 12:197-202,2006
6) 日本バイオインフォマティクス学会http://www.jsbi.org/jsbi new/index.html.
7) 遺伝子検査技術委員会:一目でわかる遺伝子検査マニュアル.日本臨床検査自動化学会誌 29(Sppl2):2004
8) 有吉範高・北田光一:薬剤の代謝多型と薬剤応答性.最新医学 60:1809-1818,2005
9) http://www.novartis.co.jp/product/las/ka/ka lastab02.html
10) Human Cytochrome P450 (CYP) Allele Nomenclature Committee:http://www.imm.ki.se/CYPalleles/
11) 臨床病理レビュー123臨床に有用な遺伝子検査.克誠堂,2002
12) 遺伝子診療学.日本臨牀増刊,2005
掲載誌情報