文献詳細
文献概要
増刊号 新しい臨床検査・未来の臨床検査 各論 1.血液検査
5 可溶性フィブリン
著者: 尾川智美1 北島勲2
所属機関: 1富山大学附属病院検査部 2富山大学医学部臨床分子病態,検査学講座
ページ範囲:P.1099 - P.1100
文献購入ページに移動血栓症や播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation,DIC)において,患者の凝固・線溶状態把握は治療法選択などの臨床的に極めて重要である.トロンビン・アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex,TAT),プロトロンビンフラグメント1+2(F1+2),フィブリノペプタイドA(FPA),Dダイマーなど多くの凝血マーカーが現在臨床現場で利用されているが,どのマーカーが有用性を示すのか疾患により評価が一定していない.近年,モノクローナル抗体IF-43により可溶性フィブリン(soluble fibrin,SF)を特異的に検出することが可能となった.IF-43はフィブリンモノマー(fibrin monomer,FM)1分子がフィブリノゲン(fibrinogen,Fbg)2分子と結合した,SF形成時にEドメイン上に出現する抗原決定基を認識する.SF測定することにより,血中でのトロンビンが活性化状態,すなわち,Fbgがフィブリンへ変換される初期段階を検査できる.さらに,トロンビンの生体内活性化状態を迅速に診断できることのみならず,SF自体が新しく形成される血栓量を反映する.したがって,SFは血液凝固亢進状態を示す優れた分子マーカーと評価できる.
参考文献
掲載誌情報