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増刊号 新しい臨床検査・未来の臨床検査 各論 1.血液検査
ノート 最新のDIC診断基準
著者: 和田英夫1 山田絵梨2
所属機関: 1三重大学医学部臨床検査医学 2三重大学医学部附属病院中央検査部
ページ範囲:P.1104 - P.1107
文献購入ページに移動播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation,DIC)1)という言葉が使われ始めたのは1950~1960年代で,病理学的概念が尊重されて微小血栓の証明が必要とされた.1972年にはColmanの診断基準2)が発表され,大きな検査室でのDIC診断が可能になった.1979年に厚生省のDIC診断基準3)が作成され,基礎疾患の有無,臨床症状,global coagulation testsによるスコアリングによりDICが診断され,一般病院でのDIC診断が可能になった.1987年には厚生省診断基準改訂版4)ができ,補助診断項目として止血系分子マーカーやプロトロンビン時間(prothrombin time,PT)比が採用された.近年,全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome,SIRS)5)という概念が提唱され,重症敗血症に活性化プロテインC(activaed protein C,APC)6)やアンチトロンビン(antithrombin,AT)7)などの臨床試験が行われた.その結果,重症敗血症は高頻度にDICを合併するとともに,DICの診断/治療が重症敗血症の予後に大きなウエイトを占めることが示唆された.2001年に国際血栓止血学会(International Society of Thrombosis and Haemostasis,ISTH)の科学的標準化委員会(Scientific Standardization Committee,SSC)がovert-DIC診断基準を発表した8).また,日本救急医学会からはより簡易で,感度の良い急性期DIC診断基準9)が発表された.
一方,DICの定義や概念には,病理学的なものから臨床検査学的なものまで種々のものがある10).近年,国際血栓止血学会(ISTH),日本血栓止血学会,日本救急医学会,日本DIC研究会などで活発な議論がなされた結果,DICに関して一定の見解が得られつつあり,DICの定義や概念は表1に示すISTHのものが最も妥当と考えられている.すなわち,DICの病態としては出血ではなく血栓症状を主体としたものが重視され,基礎疾患は感染症などの炎症性疾患に重点が置かれ,臨床検査のみによりDICの診断できるようになりつつある.Pre-DICについても,近年ではほとんどの臨床家がDICの早期治療に肯定的である.また,DICの診断はすべての基礎疾患で同じであるというのが共通認識であったが,近年では感染症DICの早期診断は困難であることから,感染症のDIC診断基準を作ろうという動きが加速されてきている11).DICの概念・定義・診断基準は,その時代の社会的基盤に従いどんどん変化してきている.
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