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文献詳細

雑誌文献

検査と技術34巻11号

2006年10月発行

文献概要

増刊号 新しい臨床検査・未来の臨床検査 各論 2.生化学検査

1 シスタチンC

著者: 斉藤憲祐1

所属機関: 1デイド ベーリング株式会社マーケティング部

ページ範囲:P.1110 - P.1113

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 はじめに

 現在わが国で臨床的に用いられている主なGFR測定法は,内因性クレアチニンクリアランス(creatine clearance,Ccr)や外因性チオ硫酸ナトリウムクリアランス(Cthio)などがあり,また,GFRを推定するための腎機能マーカーとして血清クレアチニン値,血液尿素窒素(blood urea nitrogen,BUN)および低分子蛋白質の血清β2-マイクログロブリン(β2-microglobulin,β2-m)値などが用いられている.

 Cthioを測定するには,静脈注射(静注)や正確な蓄尿が必要で患者への負担が大きい.また,測定操作も煩雑であるという問題点がある.一方,Ccrを算出するためには,標準的に24時間の蓄尿が必要なので,その正確性が問題点として指摘されている1).BUN値は,食事としての蛋白質摂取量の影響を強く受ける.血清クレアチニンは食事の影響は少ないが,筋肉量に関係するため運動の影響を受ける.また,血清クレアチニン値が1mg/dl以下は,GFRの低下を反映しにくいブラインド領域と呼ばれており,腎疾患早期の診断には適していない.血清β2-m値は,悪性腫瘍および自己免疫疾患の場合でも高値を示す.このように腎前性の影響がある場合には,かならずしも理想的なGFRの血清マーカーではない.

 シスタチンCは,シスタチンスーパーファミリーに属し,分子量13kDaの塩基性低分子蛋白である.シスタチンCは全身の有核細胞に存在しており,プロテアーゼインヒビターとして細菌の産生するプロテアーゼから細胞を防御する働きがある.他の血漿蛋白と複合体を形成せず,腎糸球体から濾過され近位尿細管で再吸収される2,3).そのため,GFRの低下とシスタチンC濃度は相関すると言われており4,5),GFRの低下は,シスタチンC濃度を上昇させる.また,血清クレアチニンと違い筋肉量の影響も受けない.これらのことから,腎前性の影響の少ない,早期腎機能マーカーとしてシスタチンCが注目されている.

参考文献

1) 日本腎臓学会腎機能(GFR)・尿蛋白測定委員会:日本腎臓学会腎機能(GFR)・尿蛋白測定委員会報告書,日本腎臓学会誌 43(1):1-19,2001
2) Simonsen O, Grubb A:Thysell H. The blood serum concentration of cystatin C (gamma-trace) as a measure of the glomerular filtration rate. Scand. J. Clin. Lab. Invest 45:97-101,1985
3) Randers E, Erlandsen EJ:Serum cystatin C as an endogenous marker of the renal function a review. Clin Chem Lab Med 37:389-395,1999
4) Grubb A:Diagnostic value of analysis of cystatin C and protein HC in biological fluids. Clin Nephrol 38(Suppl1):S20-27,1992
5) Coll E, Botey A, Alvarez L, et al:Serum cystatin C as a new marker for noninvasive estimation of glomerular filtration rate and as a marker for early renal impairment. Am J Kidney Dis 36:29-34,2000
6) Newman DJ, Thakker H, Edwards RG, et al:Serum cystatin C measured by automated immunoassay:A more sensitivity marker of changes in GFR than serum creatinine. Kidney Int 47:312-318,1995
7) 富野康日己:シスタチンCの日常診療への導入により腎機能検査はどう変わるか? Nephrology Frontier 4:321-324,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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