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増刊号 新しい臨床検査・未来の臨床検査 各論 3.免疫血清検査
ノート 関節リウマチの早期診断
著者: 大田俊行1
所属機関: 1産業医科大学臨床検査・輸血部
ページ範囲:P.1200 - P.1202
文献購入ページに移動関節リウマチ(rheumatoid arthritis,RA)はその多くが潜行性に発症し慢性に経過して多関節に障害を及ぼす関節疾患であると同時に関節以外の臓器障害をきたすことのある全身性炎症性疾患であり,さらにリウマトイド因子(rheumatoid factor,RF)などの自己抗体の出現や免疫担当細胞の異常を認めることから自己免疫疾患でもある.その診断は米国リウマチ学会(American College of Rheumatology,ACR)の1987年改定分類基準1)に照らし合わせることで行われている.しかし,この基準は発症して時間の経過した典型的なRA患者を集めて作成された経緯があり,発症早期の関節炎患者は対象となっておらず早期RAの診断には適さない2).そのため発症して日の浅い関節炎患者をプライマリーケア医が診察し,ACR基準を満たさないがRA疑いの患者は直ちにリウマチ専門医の常駐する施設(早期関節炎クリニック:early arthritis clinic,EAC)に紹介することが望ましいとされている.この紹介制度は欧州では1990年代から始まっており,早期RAという概念の確立,早期から疾患修飾性抗リウマチ薬(disease modifying anti-rheumatic drugs,DMARDs)投与による寛解率の向上・骨破壊進行の鈍化といったRA医療の向かうべき道が明瞭に示された.さらに,軟骨菲薄・骨びらんなどの関節破壊は徐々に起こるのではなく発症後2年以内に急速に生じること,また発症早期にしか開いていないが治癒に導けるかもしれない「window of(therapeutic)opportunity(治療機会の窓)」との魅力的な概念もこのEACによる臨床研究から発生した.
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