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増刊号 新しい臨床検査・未来の臨床検査 各論 5.感染症検査
12 血清中のHBVプレコア変異およびコアプロモーター変異遺伝子同定検査
著者: 田中靖人1 溝上雅史1
所属機関: 1名古屋市立大学大学院医学研究科臨床分子情報医学
ページ範囲:P.1280 - P.1283
文献購入ページに移動B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus,HBV)HBVは不完全2本鎖DNAウイルスで,ヘパドナウイルスに属する.感染源としては母子感染が主体であったが,ワクチン等の普及により母子感染は減少傾向であるが,東南アジアを中心として罹患率は非常に高く依然として大きな問題である.日本ではキャリア率1%以下であるが,インドネシアやマレーシアでは約5%,タイ6~10%,特に人口の多い中国ではキャリア率10%といわれており,肝細胞癌の主要な原因となっている.中国や台湾では肝疾患の70~80%にこのHBV感染が関与しており,大きな問題となっている.
一般的にDNAウイルスはRNAウイルスに比較して遺伝子変異が少ないとされているが,このHBVは逆転写過程を持つため高率に変異を起こすことが知られており,DNAウイルスの中では変異しやすいウイルスと考えられている.この遺伝子変異を利用することでHBV遺伝子配列の比較が可能であり,近年の分子進化学の発展によりA型からH型までの8つの遺伝子型(genotype)に分類されている.また,病態に寄与する特異的なHBV点変異も様々報告されているが,代表的なものとしてプレコア(preC)変異とコアプロモーター(core promoter,CP)変異がある.本稿では臨床的意義が比較的明らかにされているpreC変異やCP変異の検出法を中心に解説する.
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