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文献詳細

雑誌文献

検査と技術34巻11号

2006年10月発行

文献概要

増刊号 新しい臨床検査・未来の臨床検査 各論 6.遺伝子検査

1 bcr-abl mRNA

著者: 上平憲1

所属機関: 1長崎大学大学院医歯薬学総合研究科病態解析・制御学講座

ページ範囲:P.1312 - P.1314

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 はじめに

 bcr-abl融合遺伝子は,Nowellら(1962年)1)によって慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia,CML)にPh1染色体として発見された染色体異常に始まる.当初,21番の長腕の欠損とされていたが,その後,9番と22番染色体の長腕の相互転座,t(9;22)(q34;q11)であることが明らかにされた2).分子生物学的には,9番染色体上の癌原遺伝子c-ablが22番染色体の限られた切断部位(bcr)の近傍に転座し,後天的に新たにつくり出された融合遺伝子である.

 c-ablはproto-oncogeneで,正常細胞では145kDaの蛋白を少量産生しているのみでin vitroではほとんどチロシン活性を示さないとされている.しかし,bcrと融合したbcr-abl融合蛋白は,強力な非受容体型チロシンキナーゼ活性を有しており,Ras・PI3キナーゼ・Stat5の細胞内シグナル伝達経路を介して細胞周期を「正」に制御してCML細胞などの増殖に関与する.

 また,bcrの主要な切断部位は,Major(M)-bcr,minor(m)-bcr,μ-bcrの3か所に集中しており,各々M-bcrはCML,m-bcrは急性リンパ性白血病(acute lympho-blastic leukemia,ALL), μ-bcrは好中球性白血病(CNL)に特異的である.

 したがって,本融合遺伝子は,Ph陽性白血病の診断と切断部位の差による病型診断,Imatinibの適応や管理,治療後の緩解の深さ(分子緩解)および腫瘍量(MRD)のモイニターとしての重要な分子バイオマーカーである.

参考文献

1) Nowell PC:A minute chromosome in human chronic granulocytic leukemia. Blood 8:65-66,1962
2) Rowley JD:A new consistant abnormalities in CML identified by quinacrine fluorescence and Giemsa staining. Nature 243:290-293,1973
3) Bose S, Deininger M, Goora-Tyber J, et al:The presence of typical and atypical BCR-ABL fusion genes in leukocytes of normal individuals:Biological significance and implications for the assessment of MRD. Blood 92:3362-3367,1998

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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