文献詳細
増刊号 新しい臨床検査・未来の臨床検査
各論 8.生理検査
文献概要
はじめに
生理検査としての神経磁気診断は,現在「原発性および続発性てんかん,中枢神経疾患に伴う感覚障害および運動障害の患者に対する手術部位の診断や手術方法の選択を行う場合に限り,手術前の1回のみ算定できる」という制限が設けられている.この適用の対象となる検査手法が脳磁場計測法である.
脳磁図(magnetoencephalogram,MEG)計測の基礎研究は,1960年ごろより始められたが,当初計測チャンネルの少ない磁場計測装置であったために,脳全域からの同時記録が不可能であった.また地磁場に比べて約10億分の1程度と非常に微弱なために安定した脳磁場の計測が困難であった.しかしその後1970年代に入り,極低温下における超伝導技術を用いた超伝導量子干渉素子(superconducting quantum interference device,SQUID)が開発され,磁場計測が実用されるようになった.さらに計測コイルの多様化と,チャンネル数が増加し,現在ではほぼ頭部全体を覆う多チャンネル脳磁場計測装置が開発されている.
脳磁場計測の特徴は,優れた時間・空間分解能にある.1ミリ秒のレベルで複数の脳活動部位の時間的関係を明らかにすることができる.また頭蓋骨・脳脊髄液・脳・硬膜などの頭部の構成組織の透磁率は均一とみなされるために,頭部術後や頭部挫傷後などの構成組織の変化による頭皮上の磁場信号とその分布には歪みが生じない.その結果,計測された磁場信号に基づく脳内活動源を数mm以内の誤差で推定することができる.また活動の大きさは,脳波のような基準電極との相対値ではなく,絶対値として求められる.
MEGを用いて,てんかん源性発作波焦点の同定に始まり,認知・記憶・言語などの高次脳機能に関して,多くの基礎研究および臨床応用が実施されてきた.また軽度認知障害,アルツハイマー型認知症にとどまらず,び漫性軸索損傷に代表されるような構造学的に著明な変化のない症例での認知障害などの高次脳機能の病態解明にも応用されている.
生理検査としての神経磁気診断は,現在「原発性および続発性てんかん,中枢神経疾患に伴う感覚障害および運動障害の患者に対する手術部位の診断や手術方法の選択を行う場合に限り,手術前の1回のみ算定できる」という制限が設けられている.この適用の対象となる検査手法が脳磁場計測法である.
脳磁図(magnetoencephalogram,MEG)計測の基礎研究は,1960年ごろより始められたが,当初計測チャンネルの少ない磁場計測装置であったために,脳全域からの同時記録が不可能であった.また地磁場に比べて約10億分の1程度と非常に微弱なために安定した脳磁場の計測が困難であった.しかしその後1970年代に入り,極低温下における超伝導技術を用いた超伝導量子干渉素子(superconducting quantum interference device,SQUID)が開発され,磁場計測が実用されるようになった.さらに計測コイルの多様化と,チャンネル数が増加し,現在ではほぼ頭部全体を覆う多チャンネル脳磁場計測装置が開発されている.
脳磁場計測の特徴は,優れた時間・空間分解能にある.1ミリ秒のレベルで複数の脳活動部位の時間的関係を明らかにすることができる.また頭蓋骨・脳脊髄液・脳・硬膜などの頭部の構成組織の透磁率は均一とみなされるために,頭部術後や頭部挫傷後などの構成組織の変化による頭皮上の磁場信号とその分布には歪みが生じない.その結果,計測された磁場信号に基づく脳内活動源を数mm以内の誤差で推定することができる.また活動の大きさは,脳波のような基準電極との相対値ではなく,絶対値として求められる.
MEGを用いて,てんかん源性発作波焦点の同定に始まり,認知・記憶・言語などの高次脳機能に関して,多くの基礎研究および臨床応用が実施されてきた.また軽度認知障害,アルツハイマー型認知症にとどまらず,び漫性軸索損傷に代表されるような構造学的に著明な変化のない症例での認知障害などの高次脳機能の病態解明にも応用されている.
参考文献
1) 日本臨床神経生理学会 脳磁図ガイドライン作成委員会:臨床脳磁図検査解析指針.臨床神経生理学 33:69-86,2005
2) 西谷信之,柴崎浩:MEGによる高次脳機能研究.神経研究の進歩 47:882-890,2003
3) 西谷信之:脳磁図による高次脳機能障害診断.総合リハビリテーション 30:1019-1024,2002
4) 西谷信之:MEGの臨床応用.柳澤信夫,篠原幸人,岩田誠他(編):Annual Review神経2001.中外医学社,pp49-66,2001
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