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文献詳細

雑誌文献

検査と技術34巻12号

2006年11月発行

文献概要

連載 臨床医からの質問に答える

高カロリー輸液とビタミン B1欠乏

著者: 橋詰直孝1 本三保子2 五十嵐紘美2

所属機関: 1和洋女子大学家政学部 2和洋女子大学家政学部健康栄養学科

ページ範囲:P.1405 - P.1407

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 背景

 1967年Dudrickら1)により開発された中心静脈からの高カロリー輸液(total parenteral nutrition,TPN)は,経口・経腸では十分な栄養摂取ができない患者および外科領域における術後患者の治療成績を著しく向上させた.TPN治療が開発されてから30数年になるが,現在,わが国において常時4~5万人以上の患者がTPNを受けているともいわれている.しかし現在,TPNが導入された初期の頃には予想できなかった種々の合併症が報告されるようになった.

 TPN施行時における乳酸アシドーシスの最初の報告は,1975年のBlennow2)によるもので,14歳の少年にビタミンB1を添加しないTPNを14か月間行ったところ,ビタミンB1欠乏症であるウェルニッケ脳症(Wernicke encephalopathy)とアシドーシスとを併発していた.その後,内外におけるTPN施行時の乳酸アシドーシスの報告は増加し,しかもこのなかには死亡例が含まれていることが報じられた.事態を重くみた旧厚生省は1991年に,TPN中の重篤なアシドーシスの発現に関する緊急安全性情報を配布し注意を喚起した.当初,その原因は輸液成分にあるのではないかとされたが,症例が蓄積し,そのなかにはビタミンB1を投与することで軽快する例が報じられたことから,これら一連の症例の元凶はビタミンB1の欠乏にあったことが判明した.これを受けて1997年には,TPN中のビタミンB1投与に重点を置いた緊急安全性情報が改めて配布されている.

 TPN施行時のアシドーシスの報告数3)は1994年をピークに少なくなっているが,今日でも散見される.

参考文献

1) Dudrick SJ, Wilmore DW, Vars HM, et al:Long-term total parenteral nutrition with growth, and positive nitroben balance. Surgery 64:134-142,1968
2) Blennow G:Wernicke encephalopathy following prolonged artificial nutrition. Am J Dis Child 129:1456-1460,1975
3) 標葉隆三郎:高カロリー輸液で何が問題か? 第35回日本外科代謝栄養学会ランチョンセミナー3,1998
値標準化に関する報告書(第1報)―高速液体クロマトグラフィーによる測定法を中心に.ビタミン 71:481-484,1997

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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