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文献詳細

雑誌文献

検査と技術34巻12号

2006年11月発行

文献概要

検査じょうほう室 生化学 腫瘍マーカー・9

絨毛癌マーカー hCG・SP1を中心に

著者: 八杉利治1 久具宏司1 武谷雄二1

所属機関: 1東京大学医学部産科婦人科学教室

ページ範囲:P.1429 - P.1431

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hCGの特性と測定

 ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin,hCG)は,分子量約36,700の,主に胎盤(絨毛)から産生される糖蛋白質であり,絨毛性疾患の腫瘍マーカーとしては最も重要である.hCGは92個のアミノ酸残基から成るα-サブユニットと145個のアミノ酸残基から成るβ-サブユニットとの非共有結合によるヘテロダイマーである.hCGのα-サブユニットは,下垂体由来の黄体化ホルモン(luteinizing hormone,LH)や卵胞刺激ホルモン(follicle-stimulating hormone,FSH)のα-サブユニットとその配列がほぼ共通であり,hCGの生物活性を有しているのはβ-サブユニットであるが,それもLHのβ-サブユニットと多くの部分で共通の配列を有している.このようにhCGはLHと類似した構造を持ち,LH受容体に結合してLHに類似した生物活性を発揮する.

 hCGβ-サブユニットをコードする6個の遺伝子は,第19番染色体上にLHβ-サブユニットの遺伝子とともに遺伝子群として存在しており,hCGβ-サブユニットはLHβ-サブユニットから分化したものと推定されている1).hCGβ-サブユニットは113位のアミノ酸まではLHβ-サブユニットとほぼ共通だが,それよりC末端側には32個の特異的なアミノ酸残基が付加しており,全アミノ酸残基数もLHβ-サブユニットより24個多い145個である.このC末端の32個のアミノ酸残基をhCGβ-カルボキシル末端ペプチド(hCGβ-carboxyl terminal peptide,hCGβ-CTP)と呼び,この部分に対する抗体が近年の精密な測定に用いられている.このhCGβ-CTPが付加されることにより,hCGはLHよりも分子量・親水性が増し,生物学的半減期が延長して生物活性の向上につながると考えられている.ちなみにhCGの血中半減期は約24時間で,LHの2時間に比べるとはるかに長いのである.

参考文献

1) Jameson JL, Hollenberg AN:Regulation of chorionic gonadotropin gene expression. Endocr Rev 14:203-221,1993
2) Szymendera JJ, Ploch E, Zalucka K, et al:Gestational trophoblastic diseases:the ratio of choriogonadotropin to specific pregnancy protein, hCG/SP1, provides useful diagnostic and prognostic evidence. Gynecol Oncol 23:149-159,1986
3) Matsuura S, Ohashi M, Chen HC, et al:Physicochemical and immunological characterization of an HCG-like substance from human pituitary glands. Nature 286(5774):740-741,1980
4) Rotmensch S, Cole LA:False diagnosis and needless therapy of presumed malignant disease in women with false-positive human chorionic gonadotropin concentrations. Lancet 355(9205):712-715,2000

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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