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検査じょうほう室 生化学
便ヘモグロビンは大腸がんの指標となりうるか ?
著者: 東塚伸一1 神野勉2
所属機関: 1財団法人兵庫県予防医学協会 2財団法人兵庫県予防医学協会保健環境部保健検査科
ページ範囲:P.1432 - P.1434
文献購入ページに移動便ヘモグロビンの測定方法には化学法と免疫法とが存在するが,大腸がんのスクリーニングには食事制限が不要で,感度・特異度に優れている免疫法が用いられる.
免疫法による便中のヘモグロビンの測定は,免疫便潜血検査,便中ヘモグロビン検査,さらには定量法の場合に便中ヘモグロビン精密測定など,さまざまな名称で表現されているが,本稿では便ヘモグロビン検査〔以下,便hemoglobin(Hb)検査〕とする.
近年,食生活の欧米化,特に動物性脂肪の摂取量の増加など1)により,大腸がんの罹患率は年々増加しており,1999年度の患者調査によると,結腸がんおよび直腸がんを併せると226,000人(男126,000人,女90,000人)2),また2004年度の人口動態統計によると大腸がんによる死亡者数は40,037人で,前年度に続き1,000人以上の増加となっている3).そのような背景のなか,便Hb検査をスクリーニング手法とした大腸がん検診は,自治体が実施する地域検診をはじめ,各種健康診断にも組み込まれるなど積極的に実施されており,その効果は厚生労働省の研究班報告4)により証明されている(しかしながら,受診率は依然として低く,早期発見・早期治療による医療費の抑制,死亡率の低下には至っていない).
このように便Hb検査が,大腸がん発見に効果を発揮しているなら,“大腸がんの指標”,つまり大腸がんのマーカー的な役割が果たせないか?との考えかたもできなくはない.
今回,大腸がん検診で発見された大腸がんや各種疾患の便Hb検査結果を基に検証してみたい.
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