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病気のはなし
卵巣癌
著者: 加藤雅史1 喜多恒和1
所属機関: 1防衛医科大学校産婦人科
ページ範囲:P.1466 - P.1470
文献購入ページに移動卵巣癌はその解剖学的位置から,腹部からの触診が困難で,卵巣が腫大しても周囲への圧迫症状がほとんどなく,また,腹膜播種をきたしやすいこともあり,患者の60~70%はいわゆる進行癌で発見される.一方,子宮頸癌は近年,がん検診の普及により年々死亡率が減少しているにもかかわらず,卵巣癌の死亡率は増加の一途をたどっている.卵巣癌は婦人科癌のなかで最も致命率の高い癌であるが,その原因の一つとして早期発見,早期診断が困難であることが挙げられる.卵巣癌の早期発見のために超音波検査や腫瘍マーカーなどを用いてスクリーニングしている地域もあるが,健常女性の集団検診への応用における有用性は証明されていない.
しかしながら,卵巣癌は化学療法に比較的感受性を有し,手術療法,放射線療法などを併用して集学的に治療することで進行癌であっても完全寛解を得て,長期生存する例も存在するようになってきた.特に1965年ごろから出現したプラチナ製剤により,卵巣癌の生存率は大いに改善され,プラチナ製剤は現在でも卵巣癌のkey drugとして使用されている.その後,新規抗癌剤としてタキサン製剤などが次々と開発され,現在では卵巣癌の化学療法として,プラチナ製剤とタキサン製剤との併用療法が標準となっている1).ところが抗癌剤に耐性の癌,再発癌,遠隔転移癌に対しては,現行の多剤併用化学療法のみでの治療では限界がきており,抗癌剤と組み合わせて抗腫瘍効果を期待する治療法として,分子標的療法,免疫抗体療法,遺伝子療法などが研究され実用化されつつある.卵巣癌治療におけるテーラーメード化も進んでおり,今後のさらなる研究の進歩が望まれる2).
参考文献
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