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文献詳細

雑誌文献

検査と技術34巻13号

2006年12月発行

文献概要

ラボクイズ

11月号の解答と解説

著者: 渡辺伸一郎1

所属機関: 1東京女子医科大学臨床検査科

ページ範囲:P.1493 - P.1493

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【問題1】 解答:①急性膵炎

解説:上腹部痛,黄疸を主訴に来院した患者である.問題の表1,2の臨床検査成績では,WBC・CRPの上昇,Alb低下,軽度の黄疸,肝・胆道系酵素の上昇,LDの上昇,Caの低下,空腹時血糖の上昇,アミラーゼ・リパーゼ・エラスターゼ1の上昇を認める.上腹部痛・圧痛と血中膵酵素の上昇から,急性膵炎の診断基準1)に合致する.しかし,本例では膵酵素値以外の生化学検査データの異常が多彩である.急性膵炎には時として重症化し死の転帰をとることがあり,これを重症急性膵炎として取り扱っている.急性膵炎の重症度判定基準1)では,予後因子①が1項目,あるいは予後因子②が2項目以上陽性のものを重症,予後因子②が1項目のみ陽性のものを中等症,予後因子①および②のいずれも認めないものを軽症としており,表に示す予後因子①のBE,BUN,Crや,予後因子②のCa,FBS,PaO2,LDH,TP,プロトロンビン時間,血小板数などの検査値は重症度判定の重要な指標である.本症例では,予後因子②のFBSとLDHとの2項目が陽性で,重症急性膵炎と診断される.

 図1に本症例の腹部CT像を示す.膵体尾部は著明に腫大し,膵内部の不均一像,広汎な浸出液の貯留を認め,CT Grade Vと判定された.

参考文献

1)急性膵炎の診療ガイドライン作成委員会(編):基本的診療方針のフローチャート.エビデンスに基づいた急性膵炎の診療ガイドライン.金原出版,pp36,2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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