icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術34巻3号

2006年03月発行

文献概要

トピックス

免疫非反応性アルブミン

著者: 中山亜紀1 芝紀代子1

所属機関: 1東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科

ページ範囲:P.308 - P.310

文献購入ページに移動
 尿中微量アルブミンは糖尿病性腎症の早期マーカーとされ,今日まで何の疑問も持たずに免疫法で広く測定されている.ところが2001年,Comperらは,糖尿病ラット尿中に免疫反応性アルブミンに加え,免疫非反応性アルブミンの2種類のアルブミン(どちらも66kDa)が排泄されていると報告した.トリチウム標識ラット血清アルブミン([3H]-rat serum albumin,[3H]-RSA)を静注したストレプトゾトシン糖尿病ラットの血清と尿とを,ゲル濾過カラムを用いた高速液体クロマトグラフィ(high performance liquid chromatography,HPLC)法とラジオイムノアッセイ(radio immunoassay,RIA)法とを用いて解析し,比較検討を行った研究結果である.HPLC法において,血清中のアルブミンのピークは糖尿病ラット,コントロールラットともにアルブミンスタンダードと同じ位置に出現する.ところが同様に尿を分析すると,コントロールラットの尿中アルブミンはほとんどが低分子側にフラグメント化しているのに対して,糖尿病ラットの尿は低分子側のアルブミンフラグメントピークだけでなく,アルブミンスタンダードと同じ位置にもピークが見られた(図1).HPLC法で測定されたアルブミンピーク(66kDa)の放射活性(radioactivity)から求めたアルブミン濃度と,RIA法から得られたアルブミン濃度とでは違いがみられ,前者のほうが高値であった.HPLC法では免疫反応性アルブミンと非反応性アルブミンとを測定しているのに対して,RIA法では免疫反応性アルブミンのみを測定しているために,この乖離が生じたとしている1).これはヒトの糖尿病患者を用いた研究でも同様の結果が得られており,さらに,このようなアルブミンの変化は血清中では認められないことから,糸球体で濾過された後,尿中に排泄されるまでの間でなんらかの修飾を受けていることが示唆されている2)

 またComperらは,アフィニティーカラムにかけた糖尿病患者尿のflow throughつまり,抗アルブミン抗体に反応しない画分をさらにゲル濾過カラムに通し,66kDaのアルブミンピークを分取し,免疫非反応性アルブミンとして精製している.この精製サンプル中には1%以下で他の尿中蛋白質(トランスフェリン,IgG,Tamm Horsfall糖蛋白質,α1アンチトリプシン,α1酸性糖蛋白質)も含まれているが,純度の高いものである3).精製した免疫非反応性アルブミンサンプルをSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(sodium dodecyl sulfate polyacrylamide gel electrophoresis,SDS PAGE)とポリアクリルアミドゲル電気泳動(native PAGE)で解析したところ,native PAGE法では66kDaのところにバンドが認められたが,SDS PAGE法ではアルブミンよりも低分子側に分解した(図2).この結果を受けComperらは,免疫非反応性アルブミンはintactアルブミンの分子量を持ちながら還元作用によってフラグメント化する構造を持っていると報告している3)

参考文献

1) Greive KA, Eppel GA, Reeves S, et al: Immuno-unreactive albumin excretion increases in Streptozotocin diabetic rats. Am J Kidney Dis 38:144-152,2001
2) Osicka TM, Houlihan CA, Chan JG, et al: Albuminuria in patients with type 1 diabetes is directly linked to changes in the lysosome-mediated degradation of albumin during renal passage. Diabetes 49:1579-1584,2000
3) Osicka TM, Comper WD: Characterization of immunochemically nonreactive urinary albumin. Clin Chem 50:12 2286-2291,2004
4) Comper WD, Jerums G, Osicka TM: Differences in urinary albumin detected by four immunoassays and high-performance liquid chromatography. Clin Biochem 37:105-111,2004
5) Comper WD, Osicka TM, Clark M, et al: Earlier detection of microalbuminuria in diabetic patients using a new urinary albumin assay. Kidney Int 65:1850-1855,2004
6) Nakayama A, Ida T, Yoshida H, et al. Presence of immuno-unreactive albumin in the urine of diabetic patients. JCLA. in press.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら