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文献詳細

雑誌文献

検査と技術34巻4号

2006年04月発行

文献概要

連載 臨床医からの質問に答える

血栓止血系の分子マーカーの使い分けについて質問された

著者: 島津千里1

所属機関: 1帝京大学医学部附属病院中央検査部

ページ範囲:P.384 - P.389

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 血栓止血系マーカーは播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation,DIC)診断基準の補助診断項目に採用されており,DICの診断や治療効果・予後判定に有用である.近年,膝・股関節置換術後など術後合併症として深部静脈血栓症/肺塞栓症(以下,血栓症)の増加に関連して,2004年には関連学会より“深部静脈血栓症/肺塞栓症予防ガイドライン”が作成された.死因の上位を占める心筋梗塞や脳梗塞などは動脈硬化を基盤として,血管壁の炎症性変化,細胞増殖などに起因する血栓形成とともに発症する.血管内皮細胞傷害・活性化の程度を知ることは重要であり,血栓症発症のリスクや予知,抗血栓療法のモニターとしての有用性も期待される.

 生体内では凝固・線溶活性化の結果,トロンビン,プラスミンが生成されるとただちに阻止因子との複合体が形成される.血中では阻止因子のほうがはるかに多量に存在するため,複合体の定量は血管内での凝固・線溶活性化の程度を知る指標となる.トロンビン生成の過剰を捉える凝固系,プラスミン生成の過剰を捉える線溶系ならびに血管内皮細胞活性化・障害の各種マーカーのバランスにより血栓傾向を把握できる1)

参考文献

1) 川合陽子,香川和彦:C 凝固線溶系の分子マーカー.日本検査血液学(編):スタンダード検査血液学.医歯薬出版,pp60-69,2003
2) 朝倉英策,御舘靖雄,林朋恵:1 . DIC診断における止血系分子マーカーの有用性.渡辺清明,和田英夫(編):DIC診断・治療に対する戦略的プロジェクト―診断基準の改定,および最新の検査と治療.臨床病理レビュー特集130号,臨床病理刊行会,pp59-65,2004
3) Wells PS, Anderson DR, Rodger M, et al: Evaluation of D-dimer in the diagnosis of suspected deep-vein thrombosis. N Engl J Med 349:1227-1235.2003
4) 和田英夫,兼児敏浩,松本剛史:血栓・止血の流れ 2 . 凝固・線溶に関する分子マーカーの最新情報.日本検査血液学会雑誌 6:265-271,2005
5) Ota S, Wada H, Nobori T, et al: Diagnosis of deep vein thrombosis by plasma-soluble fibrin or D-dimmer. Am J Hematol 4:274-280,2005
6) 島津千里,宮澤幸久:可溶性フィブリン・可溶性フィブリンモノマー複合体の測定.検査と技術 32:401-408,2004
7) 渡邉眞一郎:血栓症に関するQ&A 検査・診断 FDPやD-ダイマーの測定法がいくつかありますが,血栓症やDICではどのように用いたらよいのでしょうか.血栓と循環 13:174-178,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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