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文献詳細

雑誌文献

検査と技術34巻5号

2006年05月発行

文献概要

ワンポイントアドバイス

中性脂肪測定用標準物質と測定対象物

著者: 栢森裕三1

所属機関: 1九州大学病院検査部

ページ範囲:P.457 - P.457

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 中性脂肪は疎水性であるため水に溶けない.そのため,血中においては蛋白質と結合した状態であるリポ蛋白質の形で存在している.“中性脂肪”という名称は英語表記ではトリグリセライド(triglyceride)が充てられる.つまり,構造的にはグリセロール骨格を基本として各々のヒドロキシル基(-OH)に脂肪酸が三つ結合したものを指す.測定法についてみると,日常検査では自動分析装置が普及したことから,現在では酵素的測定法がほぼ100%を占めている.測定法の原理はリポ蛋白質リパーゼ(lipoprotein lipase,LPL)を利用し,生成したグリセロールをグリセロールキナーゼ-グリセロールリン酸酸化酵素-ペルオキシダーゼ-色原体によって発色させる測定系である.生理的に血中には遊離のグリセロールが存在するので,あらかじめこのような内因性グリセロールを第一試薬中で消去し,LPLで上記の発色反応を開始するのが一般的である.一方,日常検査にはあまり多用されないが,正確性の確認された測定法として同位体希釈質量分析法(isotope dilution mass-spectrometry,ID-MS),Centers for Disease Control and Prevention(CDC,米疾病対策予防センター)の標準的測定法であるカールソン変法,日本臨床化学会(Japan Society of Clinical Chemistry,JSCC)の実用基準法であるアルカリ加水分解-グリセロールキナーゼ-ピルビン酸キナーゼ-乳酸脱水素酵素-UV法が日常検査法の正確性の確認や精度管理試料,キャリブレータ(校正用物質)に表示値を付けるのに利用されている.

 一方,日常検査に汎用されている標準物質あるいはキャリブレータは液状もしくは凍結乾燥した血清ベースのもの(実試料標準物質),標準品を界面活性剤などで溶解した水溶性ベースのものの二つに大別される.日常検査法である上記の測定原理からは,以前汎用されていたグリセロールを標準物質として用いることはできない.水溶性ベースの代表格であるトリオレインは常温では液体であるため天秤上でメスフラスコを受け皿にして滴下し,秤量する.界面活性剤を加え,均一に混合してから生理的食塩水を加えメスアップすれば使用できる.重量法により秤量できるため正確な濃度を調製することができるが,自動分析装置で粘性の高い水溶液を標準物質にして校正することは避けなければならない.最近の自動分析装置のサンプリングに要する時間は大変短いため(5秒以内),このような水溶液は対象とする血清のサンプリング量よりは多目にサンプリングされてしまう.この結果,血清の中性脂肪濃度は実際よりは低く測定されてしまうからである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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