icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術34巻7号

2006年07月発行

オピニオン

臨床検査技師の高等教育:チーム医療と研究開発

著者: 岩谷良則1

所属機関: 1大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻生体情報科学講座

ページ範囲:P.638 - P.638

文献概要

 1 . 今後の医療課題

 近年,医学・医療の高度化・複雑化に伴い,医療過誤の増大が大きな社会問題となってきている.医療の安全・安心をいかに保証するかが重要な課題となるが,当然この対策には費用が要る.一方,医療の高度化に加えて,少子高齢化の進展による超高齢社会の到来は,医療費の高騰と税収・保険料の減少を招き日本の財政をひっ迫させる.そして今,医療政策は,診療報酬の支払い制度を,出来高支払いから包括支払いに転換されようとしている.出来高支払い制度では,実施した医療に応じて診療報酬が支払われたが,包括支払い制度では,疾患群ごとに一定の診療報酬が支払われる.したがって今後は,適切な医療を効率よく行うことが求められる.一般企業で行われているようなTotal Quality Management(TQM)が医療の世界でも必要になってきた(http://sahswww.med.osaka-u.ac.jp/www/n-project/index.html).

 2 . チーム医療教育

 TQMは,企業のトップが制定した経営戦略を,品質目標や顧客満足度目標まで落とし込んで全社的に展開するのが特徴であり,企業のすべての部門・人の参加と協力が必要である.このことを今後の日本の医療に当てはめると,日本国の経営戦略は「限られた医療資源の中で,患者中心の適切な医療を,安全・安心に,効率よく実施すること」であり,そのために「すべての医療職は,それぞれの専門性を最大限に発揮し,連携・協働することが必要」になる.これはまさに“チーム医療”で,この“チーム医療”を成功させるには,すべての医療職が共通の目的を持ち,お互いを知り信頼し対等に議論できることが必須である.そのためには,(1)医療職の相互理解,(2)信頼に値する専門性と研究能力の修得,(3)疾病等についての共通理解,(4)高いコミュニケーション能力の獲得,が必要である.そして,この“チーム医療教育”こそが,臨床検査技師の高等教育に求められる最も重要な課題であろう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら