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文献詳細

雑誌文献

検査と技術34巻7号

2006年07月発行

文献概要

検査じょうほう室 微生物 感染症検査の迅速化・3

塗抹検査 その1

著者: 相原雅典1

所属機関: 1高根病院検査部

ページ範囲:P.675 - P.677

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 はじめに

 急速に病勢が進む感染症患者病巣には,感染の原因となった微生物と,破壊された組織や炎症細胞,および感染や炎症に関与したさまざまな要素が認められる.正に病巣は“微生物による犯罪現場”そのものである.細菌検査(以降,感染症検査)の目的は,微生物による犯罪を迅速に立証し,犯人(病原菌)を逮捕して処罰する(抗菌薬選択)ことである.

 今日,わが国でみられる感染症は,平素は無害な菌が宿主の抵抗力の低下に伴い病原体に豹変する,いわゆる日和見感染の色合いが強いため,犯人の特定は容易ではない.強毒菌感染症時代は,培養,同定検査で病原菌を検出する目的が達せられたが,平素無害菌による感染では,培養や同定が病原菌判断にはつながらない難しさがある.検出菌を感染と関連づけるためには,菌名を知ること以上に,患者の感染防御能の低下や抗菌薬の投与状況,感染を疑う根拠となる特徴の把握,治療による症状の改善と菌の消長などさまざまな証拠を集め,総合的に判断する以外に方法はない.そのために詳しい患者情報が必須であり,検体品質の適性を判断し,塗抹標本の顕微鏡検査で感染の証拠を集め,培養や同定で鏡検の裏付けをとり,治療経過を追って検査結果の確認を行うという一連の作業を,担当医師とともに臨床検査技師(以下技師)が,行うことが大切なのである.

参考文献

1) 相原雅典:2 . 感染症別検査法の整理・呼吸器感染症.菅野治重,川上小夜子(監):感染症診断に必要な微生物検査,第1版.ライフサイエンス,pp6-20,2003
2) Ishida T, Hashimoto T, Arita M, et al:Epidemiology of community-acquired pneumonia in hospitalized patients, A 3-year prospective study in Japan. Chest 114:1588-1594,1998

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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