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文献詳細

雑誌文献

検査と技術34巻8号

2006年08月発行

文献概要

けんさ質問箱Q&A

アスベストの検査法は?―特に,中皮腫の血清マーカーについて

著者: 樋野興夫1

所属機関: 1順天堂大学医学部病理学

ページ範囲:P.796 - P.799

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アスベストを喀痰から簡単に検出できる方法があれば教えてください.また,アスベストは簡易の偏光顕微鏡で観察できるのでしょうか.併せて教えてください.(岐阜市 A.O.生)

 はじめに

 そもそも汚染された環境を原因とする“がん”に冒されることを専門的には“環境発がん”という.古くは1775年,イギリスの外科医ポットの「煤による刺激によって煙突掃除人に陰囊がんが発生する」という報告に始まる.産業革命に始まる工業化によってわれわれの生活に入り込んだものだ.“文明の凶器”といわれる所以である.本人の意思と関係なく接触を強いられたことに悲劇性がある.これは現在のアスベスト問題でも同様である.これから求められることは,リスク評価に加えてリスクマネージメント,コミュニケーションであろう.どのくらいの期間,どのくらいの量に曝露されれば“がん”になる危険があるのか実は曖昧である.発がんに長い期間(20~30年)要することも曖昧さの一因である.過剰に,逆に過少に恐れることは人間として致しかたない.「曖昧なことは曖昧に答えるのが科学的である」,「正当に怖がることはいかに難しいか」に直面する.予見能力についてプロのなんたるかが問われるときでもある.

参考文献

1) Hino O, Kobayashi E, Nishizawa M, et al:Renal carcinogenesis in the Eker rat. J Cancer Res Clin Oncol 121:602-605,1995
2) Yamashita Y, Yokoyama M, Kobayashi E, et al:Mapping and determination of the cDNA sequence of the Erc gene preferentially expressed in renal cell carcinoma in the Tsc2 gene mutant (Eker) rat model. Biochem Biophys Res Commun 275:134-140,2000
3) Hino O:Hereditary renal carcinogenesis fitting Knudson's two-hit model:genotype, environment, and phenotype. Genes Chromosomes Cancer 38:357-367,2003
4) Hino O:Multistep renal carcinogenesis in the Eker (Tsc 2 gene mutant) rat model. Current Molecular Medicine 4:807-811,2004
5) 樋野興夫:アスベスト救済.読売新聞「論点」2005年10月27日付け
6) 樋野興夫:アスベスト・中皮腫より発がんを考える.新農林技術新聞,2005年12月15日付け
7) 樋野興夫,前田雅弘:アスベスト暴露と中皮腫の診断.南江堂,2006(印刷中)
8) 樋野興夫:Asbestos-related mesothelioma(“Asbestoma”)の血液診断.Human Scence 17:26-29,2006
9) 樋野興夫:アスベスト・中皮腫の実態と診療・検査の実情.モダンメディア 52:67-71,2006
10) 樋野興夫;中皮腫トピックス 血液検査―早期診断を目指して.日本胸部臨床,2006(印刷中)
11) 樋野興夫:胸膜悪性中皮腫血清マーカーについて.呼吸器科,2006(印刷中)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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