文献詳細
文献概要
疾患と検査値の推移
溶血性尿毒症症候群
著者: 尾崎由基男1
所属機関: 1山梨大学大学院医学工学総合研究部臨床検査医学講座
ページ範囲:P.837 - P.840
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血栓性細小血管障害症(thrombotic microangiopathy,TMA)は赤血球破壊による溶血性貧血,血小板凝集や血栓形成による血小板減少,微小血管循環不全による臓器障害を特徴とする種々の病態を示す概念である.主として成人に発症し,血小板減少性紫斑,神経精神症状を主症状とするものを血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura,TTP)と呼び,また主として小児,若年者に発症し急性腎不全と溶血性貧血を主症状とするものを溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome,HUS)と呼んできた.傷害される臓器にやや違いがあるが,両者とも細小動脈などの不全閉塞と組織の小梗塞巣を病理学的特徴としている.これまでは種々の原因による血管内皮細胞障害を根底とした同一の疾患ではないかと考えられていたが,この数年の研究成果によりTTPとHUSとの病因,病態の理解は著しい進歩を遂げた.
病因,病態
これまで臨床症状は少し異なるものの,本態は同一と考えられていた疾患群の理解のために,まずTTPについても病因,病態を説明したい.フォンウィルブランド因子(von Willebrand factor,VWF)は血小板と血管壁コラーゲン,また血小板同士を結合する分子糊として作用する蛋白であり,血管内皮細胞より分泌される.TTPではVWFの巨大マルチマー(unusually large VWF multimer,UL-VWF)が存在することが以前から知られていたが,最近になりa disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin type1 motif(ADAMTS)-13というVWF分解酵素が同定された.TTPではADAMTS-13に対する自己抗体が産生され,その結果としてVWFが分解されず,UL-VWFが増加すること,そのためUL-VWFと血小板との反応が起こり,血小板血栓,細小動脈閉塞による溶血性貧血,組織障害が起こることが明らかになった.先天性TTPも存在し,その場合はADAMTS-13遺伝子異常のためADAMTS-13活性が低く,幼少時からTTPを発症することが多いが,症例によっては妊娠などを契機として発見される場合もある.
血栓性細小血管障害症(thrombotic microangiopathy,TMA)は赤血球破壊による溶血性貧血,血小板凝集や血栓形成による血小板減少,微小血管循環不全による臓器障害を特徴とする種々の病態を示す概念である.主として成人に発症し,血小板減少性紫斑,神経精神症状を主症状とするものを血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura,TTP)と呼び,また主として小児,若年者に発症し急性腎不全と溶血性貧血を主症状とするものを溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome,HUS)と呼んできた.傷害される臓器にやや違いがあるが,両者とも細小動脈などの不全閉塞と組織の小梗塞巣を病理学的特徴としている.これまでは種々の原因による血管内皮細胞障害を根底とした同一の疾患ではないかと考えられていたが,この数年の研究成果によりTTPとHUSとの病因,病態の理解は著しい進歩を遂げた.
病因,病態
これまで臨床症状は少し異なるものの,本態は同一と考えられていた疾患群の理解のために,まずTTPについても病因,病態を説明したい.フォンウィルブランド因子(von Willebrand factor,VWF)は血小板と血管壁コラーゲン,また血小板同士を結合する分子糊として作用する蛋白であり,血管内皮細胞より分泌される.TTPではVWFの巨大マルチマー(unusually large VWF multimer,UL-VWF)が存在することが以前から知られていたが,最近になりa disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin type1 motif(ADAMTS)-13というVWF分解酵素が同定された.TTPではADAMTS-13に対する自己抗体が産生され,その結果としてVWFが分解されず,UL-VWFが増加すること,そのためUL-VWFと血小板との反応が起こり,血小板血栓,細小動脈閉塞による溶血性貧血,組織障害が起こることが明らかになった.先天性TTPも存在し,その場合はADAMTS-13遺伝子異常のためADAMTS-13活性が低く,幼少時からTTPを発症することが多いが,症例によっては妊娠などを契機として発見される場合もある.
参考文献
1) 日本小児腎臓病学会:腸管出血性大腸菌感染症に伴う溶血性尿毒症症候群(HUS)の診断・治療のガイドライン(改訂版).小児腎臓病会誌 2000;13:176-177
2) 藤村吉博:vWF-CPase,TTP vs HUS.関西血栓フォーラム編,血小板血栓形成の分子機構.アイプリコム社,pp117-121,2002
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