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文献詳細

雑誌文献

検査と技術35巻1号

2007年01月発行

文献概要

疾患と検査値の推移

妊娠合併症に伴うDIC

著者: 小林隆夫1

所属機関: 1信州大学医学部保健学科

ページ範囲:P.37 - P.42

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はじめに

 DIC〔disseminated intravascular coagulation:汎発性(播種性)血管内血液凝固症〕とは,本来は凝血が起こらないはずの血管内において基礎疾患の存在下に凝固亢進状態が惹起され,全身の微小血管内の血栓ならびに二次線溶亢進に基づく血小板,凝固線溶因子および阻止因子の消費をきたして出血傾向(消費性凝固障害)を呈し,さらに微小血栓による腎,肺,脳などに臓器障害を示す症候群である1~3).DICの基礎疾患としては,産科疾患,外傷,外科手術,悪性腫瘍,重症感染症などがあるが,近年国際血栓止血学会(International Society on Thrombosis and Haemostasis,ISTH)は,DICを非炎症性と炎症性に,また非代償性と代償性に分けることを提唱している4).非炎症性DICの代表は産科疾患や白血病などである.直接血管内に胎盤や白血病細胞中の組織因子などが混入して急激に外因系や線溶系が活性化され,フィブリノゲンの著明な低下とともに出血症状が主体となる.一方,炎症性DICの代表は重症感染症や外傷などである.細菌毒素・サイトカイン・ケミカルメディエーターなどが白血球を活性化し,血管内皮障害や臓器障害を惹起する.炎症性DICでは,フィブリノゲンは低下しないため出血症状をきたすことは少ないが,多臓器障害に陥りやすく予後不良である.

 本稿では,妊娠合併症に伴う産科DICの特徴を述べ,その診断基準や重要な臨床検査値の推移を解説する.

参考文献

1)小林隆夫:産科DICの診断と治療.産と婦 73:1357-1364,2006
2)小林隆夫:産科ショックとDIC.小林隆夫,水上尚典,白幡聡(編):周産期の出血と血栓症.金原出版,pp168-182,2004
3)小林隆夫:産科ショック.池ノ上克,他(編):NEWエッセンシャル産科学・婦人科学第3版.医歯薬出版,pp470-480,2004
4)Taylor Jr FB, Toh CH, Hoots WK, et alu:uTowards definition, clinical and laboratory criteria, and a scoring system for disseminated intravascular coagulation. Thromb Haemost 86:1327-1330,2001
5)寺尾俊彦:産科における救急処置.日本母性保護医協会研修ノートNo.35,1989
6)真木正博,寺尾俊彦,池ノ上克:産科DICスコア.産婦治療 50:119-124,1985
7)青木延雄,長谷川淳:DIC診断基準の「診断のための補助的検査成績,所見」の項の改定について.厚生省特定疾患血液凝固異常症調査研究班昭和62年度研究報告書,pp37-41,1988
8)和田英夫:播種性血管内凝固症候群(DIC).一瀬白帝(編著):血栓・止血・血管学.中外医学社,pp431-437,2005
9)寺尾俊彦,真木正博,池ノ上克:産科領域にみられるDICのスコア化.血液と脈管 17:543-554,1986
10) Terao T, Maki M, Ikenoue Tu:uA prospective study in 38 patients with abruptio placentae of 70 cases complicated by DIC. Asia-Oceania J Obstet Gynecol 13:1-13,1987

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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