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文献詳細

雑誌文献

検査と技術35巻1号

2007年01月発行

文献概要

検査じょうほう室 〈免疫血清〉

中空糸膜を利用したプール血清の作製法

著者: 角田美鈴1

所属機関: 1国立大学法人富山大学附属病院検査部

ページ範囲:P.58 - P.60

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はじめに

 信頼性の高い臨床検査結果を得るため,また長期間安定した測定精度を維持するためにも,精度保証(外部精度管理,内部精度管理)が重要である1~3).検査室の日常検査における精度管理の方法としては,一般的にX-R管理図法が広く利用されている.管理用材料としては2~4濃度の管理血清が用いられており,ほとんどの施設で市販管理血清が利用されているが,複数濃度の管理血清のうち一濃度はプール血清を用いている施設も多い.

 プール血清は比較的多量に作製できるので,長期間同一ロットでの内部精度管理が可能であること,管理対象試薬の測定マトリックスにおいて患者検体と同じ反応挙動を示すこと,市販管理血清と比べても低コストであることから考えても優れた管理用材料であると思われる.

 また,プール血清は毎日の精度管理以外の利用方法として,多検体連続測定時,20~30検体ごとに1回測定することにより,測定値の日内変動をモニタリングすることも可能である.そのほか,試薬検討時,同時再現性・日差再現性,共存物質の影響を調べるときのベース血清としても幅広く利用できる.

 プール血清を作製する方法は,限外濾過法,中空糸膜を用いる方法(以下,中空糸濾過法)などがある.中空糸濾過法は血清の飛散がなく,短期間に多量のプール血清が作製でき,無菌状態でプール血清を回収することが可能となるなど多くのメリットがある.しかし,中空糸濾過法の従来の操作法では,回収したプール血清の蛋白質・脂質濃度の低下が問題となっている3).そこで,この操作法を改良することにより,従来の操作法より蛋白質・脂質濃度の低下を抑えることができたので,実際の濃度変化を示すとともに,改良した中空糸濾過法を概説する.

参考文献

1)小林初代:マスターしよう基本操作 プール血清の作り方.検査と技術 5:696-670,1977
2)水野映二:基礎実習講座 プール血清の作り方と使い方.検査と技術 11:849-853,1983
3)篠原克幸,村上公夫,坂本徳隆,他:精度保証用プール血清の作製と安定性評価.医学検査 49:1336-1339,2000
4)会告:臨床検査を終了した検体の業務,教育,研究のための使用について―日本臨床検査医学会の見解.臨床病理 50:438-439,2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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