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癌細胞自殺の仕組み
著者: 立花研1 富山新太1 北中千史1
所属機関: 1山形大学医学部腫瘍分子医科学分野
ページ範囲:P.981 - P.983
文献購入ページに移動癌細胞に限らず,細胞死はまず大きく二つに分類される.一つは細胞の他殺,すなわち細胞死の直接原因が細胞の生命維持機能を強制的に破壊する結果起きる「受動的な細胞死」である.そしてもう一つが細胞の自殺,すなわち死にゆく細胞自身がもっている遺伝子の働きによって引き起こされる「能動的な細胞死」であり,プログラム細胞死とも呼ばれる.
細胞の自殺は多細胞からなる生物個体の発生や恒常性維持に重要な役割を果たしており,なかでも「癌(になる可能性をもった)細胞」の排除を通じて個体を癌から守ることは細胞自殺の重要な役目の一つである.逆に言うと,臨床的に問題となる“癌”はなんらかの方法で首尾よくこの排除機構をかいくぐってきた(=細胞自殺に対する耐性を獲得してきた)ものと考えられる.やっかいなことに,放射線や抗癌剤もしばしば癌細胞の自殺を誘発することで抗腫瘍効果を発揮しているため,細胞自殺に対する耐性はこれらの治療に対する抵抗性にも直結する.したがって,癌細胞の自殺メカニズムにどのようなものがあり,癌細胞がそれに対してどのように耐性を獲得しているかを理解することは,癌の発生機序解明や新規治療法開発を行ってゆくうえで非常に重要なポイントとなる.
ところで,従来,癌細胞の自殺はもっぱらアポトーシスにより起きるものと考えられてきた.しかしながら,近年になってアポトーシスとは形態もメカニズムも全く異なる細胞自殺が存在し,癌細胞の排除にかかわっていることがわかってきた.そこで本稿では,既に研究が著しく進んでいるアポトーシス制御の仕組みについては簡単にその概要を述べるにとどめ,アポトーシスとは異なる細胞自殺として近年急速に注目されるようになったautophagic cell deathについて主に紹介する.
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