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文献詳細

雑誌文献

検査と技術35巻11号

2007年10月発行

増刊号 メタボリックシンドローム健診検査技術マニュアル

総論

4. 精度管理法の概要

著者: 大澤進1

所属機関: 1九州大学大学院医学研究院保健学部門 検査技術科学分野生体情報学領域 臨床化学研究室

ページ範囲:P.1029 - P.1036

文献概要

はじめに

 メタボリックシンドローム健診について厚生労働省健康局の「標準的な健診・保健指導プログラム(確定版)」では健診項目の基準値などの標準化について「現行の健診では,健診の実施機関ごとに検査法,検査機器や試薬等の違いにより基準値,検査測定値や健診判定値が異なっているが,今後の新たな健診では,実施された被保険者の健診結果のデータを一元的に管理し,共通の健診判定値の設定や健診検査項目毎の検査測定値の標準化が必要である」と提言している.また,健診の血液検査10項目については,独立行政法人産業技術総合研究所などの協力を得て,可能な限り2008年度までに標準物質の開発を行い,検査測定値の標準化を行うことができるようにする1)としている.これは正確さを基盤にした測定体系とそこから得られた検査データの健診判定値の標準化であり,まさに臨床検査データの共有化とも言える.

 ここではメタボリックシンドローム健診の目的に合った,「臨床化学検査を中心とした精度管理」の概要を内部精度管理法(internal quality control,IQC)と外部精度評価(external quality assessment,EQA)の二つを軸に述べる.従来の統計学的な内部精度管理法や外部精度管理調査には,今後検査データの標準化を視野に入れた思考が求められている.したがって,内部精度管理法では精密さの管理とともに,正確さの管理とその許容誤差限界,そして不確かさの大きさが求められる.また,外部精度管理調査に参加するだけではなく,施設の外部精度評価や技能試験(proficiency testing,PT),ISO15189の試験所認定が求められるようになった.

参考文献

1) 厚生労働省健康局:標準的な健診・保健指導プログラム(確定版).2007年4月
2) 日本臨床衛生検査技師会:定量検査の精密さ・正確さ評価法標準化ワーキンググループ:定量検査の精密さ・正確さ評価法指針(JAMT-CEP1-97).医学検査 46:1130-1142,1997
3) 細萱茂実,尾崎由基男:外部精度管理の現状と問題点 外部精度管理の許容誤差限界に関する国内外の動向.臨床病理 53:547-553,2005
4) Fraser CG, Petersen PH, Ricos C, et al:Proposed quality specifications for the imprecision and inaccuracy of analytical systems for clinical chemistry. Eur J Clin Chem Biochem 30:311-317,1992
5) 山口純也,奥住裕二,神山清志:埼臨技会員施設を対象とした内部精度管理に関するアンケート調査――臨床化学検査.埼臨技会誌 49:240-246,2002
6) 日本臨床検査自動化学会 科学技術委員会:患者データを用いるQAマニュアル.日本臨床検査自動化学会会誌 28:Suppl.1,2003
7) 日本臨床検査自動化学会:極端値・パニック値対応マニュアルver.1.4.日本臨床検査自動化学会会誌 30:Suppl.1,2005
8) 社団法人日本臨床衛生検査技師会 臨床検査データ共有化部会:臨床検査データ共有化ガイドライン.医学検査 55:1246-1251,2006
9) 河野均也:共通外部精度評価事業(National External Quality Assessment Scheme:NEQAS).予防医学 45:59-63,2003
10) 菅野剛史編:厚生省科学研究費補助金報告書医療技術評価総合研究事業 外部精度管理調査の標準化に関する研究(H-10-医療-037),2000
11) 桑克彦:外部精度管理調査の現状と将来 ラボ認定と技能試験.臨床病理 51:449-455,2003
12) 日本臨床化学会クオリティマネジメント専門委員会:生理的変動に基づいた臨床化学検査36項目における測定の許容誤差限界.臨床化学 35:144-153,2006
13) 細萱茂実,尾崎由基男:5標準化と精度保証 D. 精度保証の概念と実践.臨床病理特集第109号:72-80,1999

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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