icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術35巻11号

2007年10月発行

文献概要

増刊号 メタボリックシンドローム健診検査技術マニュアル 各論

1. 検査前手順 1) 生理的変動,サンプリング,試料の取り扱い (4) CBC

著者: 常名政弘1 矢冨裕2

所属機関: 1東京大学医学部附属病院検査部 2東京大学大学院医学系研究科内科学専攻 病態診断医学講座 臨床病態検査医学分野

ページ範囲:P.1141 - P.1146

文献購入ページに移動
はじめに

 メタボリックシンドローム健診導入に当たり検査値の標準化が重要な課題の一つに挙げられるのは周知のことである.一方,検査の測定値が種々の生理的要因や検体保存状態により変動することも周知のとおりである.

 測定値の生理的変動因子は個人間変動と個人内変動に分けられるが,後者の行動要因に限っても,食事,体位,運動などの要因がある.また,検体をサンプリング(採血)した後の要因としては冷蔵,室温などの保存状態や保存時間などが挙げられる.測定項目にもよるが,これらの要因を考慮しないと検査結果の解釈を誤ることがある.測定項目のなかで末梢血球数検査(complete blood counts,CBC)に対する運動の影響も例外ではなく,白血球数,赤血球数,血小板数とも,運動負荷により測定結果が変動することは以前から知られている1~6)

 さらにCBC測定においては正しい採血,分注処理が行われたとしても0.1~0.2%の割合でEDTA塩(ethylenediamine tetraacetate)採血では血小板が凝集し,血小板数が低値になるEDTA依存性偽性血小板減少症が存在する7).EDTA依存性偽性血小板減少症の患者とわからずに採血をしたとき,測定者が血球計数器の測定原理の知識を有していない場合や,分析装置からのフラグメッセージや標本による確認を怠った場合,検査結果の解釈を誤ることがある.

 本稿では,CBCの運動負荷による変動と検体のサンプリング後の保存状態,保存時間による変動,また,EDTA依存性偽性血小板減少症について述べる.

参考文献

1) 永富良一:個人の免疫機能の評価に関する問題点.体育の科学 51:105-112,2001
2) Dhabhar FS:ストレスがもつ免疫機能の促進・抑制効果.体育の科学 51:96-104,2001
3) 宮崎裕美,芳賀脩光,大野秀樹,他:運動による炎症反応と免疫応答.体育の科学 51:134-138,2001
4) 赤間高雄,和久貴洋:スポーツ選手のコンディショニングと免疫.体育の科学 51:119-123,2001
5) 秋本崇之,河野一郎:スポーツ活動時の免疫応答.体育の科学 51:113-118,2001
6) 矢野博己:運動とKupffer細胞機能.体育の科学 51:124-133,2001
7) 手登根稔,山野健太郎,大城織江:[PLT Clumps?](血小板凝集)特にEDTA依存性偽性血小板減少症について.検査と技術 33:453-455,2005
8) Pedersen BK, Ostrowski K, Rohde T, et al:Nutrition, exercise and the immune system. Proc Nutr Soc 57:43-47,1998
9) 佐竹正博:血液製剤の種類と製法・保存法.遠山博(編):輸血学 改訂第3版.中外医学社,pp57-76,2006
10) 三島清司,久保田浩,手登根稔,他:6社の基準自動血球分析装置における機種間差の検討.医学検査 56:824-830,2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?