文献詳細
文献概要
増刊号 メタボリックシンドローム健診検査技術マニュアル 各論
3. 検査後手順―検査結果の読み方と利用法 1) 基準範囲からみた検査値の読み方 (2) 個人基準範囲の概念と分布型―個人の分布特性から個人基準範囲の設定意義
著者: 松原朱實1 市原清志2
所属機関: 1広島大学病院検査部 2山口大学大学院医学研究科保健学専攻生態情報検査学・保健学科病態検査学講座
ページ範囲:P.1235 - P.1244
文献購入ページに移動臨床検査の基準範囲とは,健常者から一定の明確な条件で抽出された基準個体の集団(母集団)の測定値分布のうち,中央の95%のデータが占める範囲をいう.SD(standard deviation)を標準偏差として,“基準範囲SD”(基準範囲幅の1/4)は個体間変動に対するSD,個体内変動に対するSDおよび測定技術誤差に対するSDの大きさで決定される1).
基準範囲SD=基準範囲幅/4
=√SD2個体間+SD2個体内+SD2分析誤差
また,近年分析機器や測定法の進歩および検査技師の努力により分析精度が向上し,測定技術誤差は基準範囲の設定ではほぼ無視できるようになった.しかし,従来設定された基準範囲は集団に対する基準範囲であり,臨床的解釈の基本的な尺度として検査値判読の比較指標にしかすぎない.ただし,個体内SDが個体間SDよりも大きい場合,すなわち個体差が少ない場合には集団の基準範囲を用いることができる.これに対し,個体内変動は小さいが個体間変動の大きな項目では集団の基準範囲を用いると,基準範囲内であっても病態の変動を見逃す恐れがあるので,集団の基準範囲よりも個人基準範囲がより重要となる.
本稿では個人基準範囲の必要性を述べ,その変動要因,分布特性を明確にする.また,集団の分布特性と,個人の分布特性との関係を,特定健診の検査項目に限定して述べる.
参考文献
掲載誌情報