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一般検査室から私の一枚
尿沈渣は「宝」の山だ!ヒトポリオーマウイルス感染細胞(ステルンハイマー染色)
著者: 古市佳也1
所属機関: 1京都市立病院臨床検査科
ページ範囲:P.1357 - P.1357
文献購入ページに移動 1985年(今から22年前)のことです.5歳男児の尿沈渣にN/C比の増大した細胞を孤立散在性に認めました.核形が類円形で核内構造がスリガラス状であることから,ウイルス感染を疑いました.当時の尿沈渣の教科書には,こうした細胞の解説や写真はありませんでした.免疫染色で核内のウイルス抗原,電子顕微鏡で核内のウイルス粒子などを証明し,ヒトポリオーマウイルス感染細胞と同定しました.この症例を契機に1年間にわたり尿沈渣におけるヒトポリオーマウイルス感染細胞の出現頻度や疾患との関連などを調査し,初めて原著論文を書き国際学会に発表しました.今では「尿沈渣検査法2000」に上皮細胞類の成分の一つとして記載されています.尿沈渣には,まだ私たちが気付かない重要な成分が隠されています.これらの宝物を一つでも多く掘り出せるように,基礎生理学や解剖学などの基礎学力を高め,一例一例の尿沈渣標本を愛し心を込めて鏡検していきたいと思います.
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