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文献詳細

雑誌文献

検査と技術35巻13号

2007年12月発行

文献概要

失敗から学び磨く検査技術―臨床化学編

遊離型T3(FT3)および遊離型T4(FT4)測定と検体希釈

著者: 平野哲夫1

所属機関: 1東京警察病院臨床検査第一部

ページ範囲:P.1469 - P.1471

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 遊離型トリヨードサイロニン(free triiodothyronine,FT3)および遊離型サイロキシン(free thyroxine,FT4)の血中での存在様式はどうなっているのだろう?

 目的とする分析対象の血中での存在様式を知っておくことは極めて重要だ.甲状腺ホルモンとしては下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone,TSH)とその標的臓器である甲状腺から放出されるトリヨードサイニン(triiodothyronine,T3)およびサイロキシン(thyroxine,T4)が知られている.このT3およびT4は血液中では主としてサイロキシン結合グロブリン(thyroxine-binding globulin,TBG),プレアルブミン(thyroxine binding prealbumin, TBPA)およびアルブミン(albumin,Alb)により運搬されているが,一部は高密度リポ蛋白質(high-density lipoprotein)に結合し細胞内へのT4の取り込みに関与している.血中ではT3は0.3%,T4は0.03%が遊離型(free,F)として存在し,これが生理活性を示す.TBGの血中濃度は低いがT3・T4に対し高親和性を示すのに対し,TBPA,Albの血中濃度はTBGに比較し高くT3・T4に対する親和性は低い.また,TBGへの親和性はT4がT3に比較し10倍程度大きい.当初は総T3および総T4が測定されていたが,近年になり生理的に活性をもつFT3,FT4が臨床症状を的確に表していることから,現在ではFT3,FT4が主として測定されるようになった.T3およびT4はその構造から難溶性であり血中濃度は極微量である.したがって生理活性を示す濃度はFT3,FT4はいずれもpmolオーダーである.

参考文献

1) Geiseler D, Ritter M : Optimization of assay conditions for free ligand determination by immunoassay. Anal Chem 54:2062-2067,1982
2) Holm SS, Andreasen L, Hansen SH, et al : Influence of adsorption and deproteination on potential free thyroxine reference methods. Clin Chem 48:108-114,2002
3) Midgley JEM : Direct and indirect free thyroxine assay methods : theory and practice. Clin Chem 47:1353-1363,2001
4) 田島裕:希釈して測定することができない検査.検査と技術 27:1244-1246,1999
5) Nelson JC, Weiss RM : The effect of serum dilution on free thyroxine (T4) concentration in the low T4 syndrome of nonthyroidal illness. J Clin Endocrinol Metab 61:239-246,1985

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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