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抗凝固剤の使い分け
著者: 近藤弘1 佐藤陽子1 巽典之2
所属機関: 1大東文化大学スポーツ・健康科学部健康科学科 2緒方医学化学研究所
ページ範囲:P.1476 - P.1477
文献概要
臨床検査に用いる採血容器の種類は多く,採血担当者は肝機能,血球計数,血糖値など検査項目に応じてこれらを間違いなく使い分けなければなりません.もしも1本の抗凝固血液でこれらすべての検査を実施できれば,採血量や採血管の本数を減らすことができるので,採血に伴う患者の負担,採血や血清分離のための時間,採血管にかかるコストなどを減らすことができると考え,私たちはこれまで汎用性の抗凝固剤を検索・検討してきました.その過程で,EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)依存性の偽性血小板減少を防止するための抗凝固剤として使用される硫酸マグネシウムに着目し,その抗凝固作用を検討したときのことです.
硫酸マグネシウムで抗凝固した血液を用いたとき,検査項目によっては測定値に従来法との乖離を認めたものの,血球計数や臨床化学検査は可能でした.異変は活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time,APTT)測定の抗凝固剤に硫酸マグネシウムを使用したときに生じました.通常,APTT測定ではクエン酸ナトリウムで抗凝固した血液を遠心分離して得た血漿0.1mlにAPTT試薬0.1mlを添加して予備加温し,25mmol/l塩化カルシウム0.1mlを添加したときに凝固が開始します.ところが,硫酸マグネシウムで抗凝固した血漿を用いたときはAPTT試薬と混和して予備加温し,塩化カルシウムを添加しようとして恒温槽から試験管を取り出したとき,既に血漿にはフィブリン塊が析出していたのです.
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