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文献詳細

雑誌文献

検査と技術35巻2号

2007年02月発行

文献概要

Laboratory Practice 〈生化学〉

血液ガスの測定値の信頼性確保のための標準物質の使い方

著者: 福永壽晴1

所属機関: 1金沢医科大学病態診断医学教室

ページ範囲:P.136 - P.139

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はじめに

 血液ガスの測定は種々の測定装置があるにもかかわらず,世界中でほぼ同様の正常値や判断基準が用いられている.例えば,正常値は動脈血pH:7.4±0.05,動脈血二酸化炭素分圧(paCO2):40±5mmHg,動脈血酸素分圧(paO2):80~100mmHgが使用されている1).また,安静時室内空気吸入下でのpaO2が60mmHg以下であれば呼吸不全と診断され,paO2が60mmHg以上にするために推奨される初回の酸素流量はpaO2が50~35mmHgまで5mmHgごとに設定されている2).さらに,paCO2が45mmHgを超えていれば二酸化炭素の蓄積ありと判断され,複雑な酸塩基平衡障害の診断・治療においても世界中ほぼ同じ判断基準が用いられている3)

 当然,血液ガスの測定値は精確(正確で精密)であることが前提となるが,はたしてそうであろうか.血液ガス測定装置では全血を直接電極に接触させて測定するため,血液のマトリクスの影響や測定回路および電極膜の汚れによる誤差が避けられない.測定値の精確さを評価する方法としては“血液pH測定用の実用基準法”4)と“血液pCO2,pO2測定用標準トノメトリーの実用基準法”5)を国際臨床化学連合(International Federation of Clinical Chemistry,IFCC)が規定しているが,これらを日常臨床の場で実施するには専用装置と複雑な操作および多大な時間を要する点で現実的でない.また,日常用いられている血液ガス測定用の精度管理物質(水溶液)も電極に対する応答特性やマトリクス効果が全血とは異なるため精密さの評価はできるが,正確さの評価には使用できない.そのため,簡単な操作で精確さの評価ができる実試料標準物質が望まれていた.

 血液ガス測定用常用標準物質(以下,標準物質)は以上のような状況からFECTEFスタンダードレファレンスセンターと日本臨床化学会血液ガス・電解質専門委員会で開発されたものであり,ヒト血液と類似した性状を有し“表示値”と“不確かさの大きさ”が示されており,これらは上位の標準値に対してトレーサブルであり,精確さの評価ができる6,7)

参考文献

1)肺機能セミナー:1998年改訂版 臨床呼吸機能セミナー.興版社,pp160-163,1998
2)肺機能セミナー:1998年改訂版 臨床呼吸機能セミナー.興版社,pp270-283,1998
3)肺機能セミナー:1998年改訂版 臨床呼吸機能セミナー.興版社,pp368-373,1998
4)Approved IFCC methods. Reference method (1986) for pH measurement in blood. Clin Chem Acta 165:97-109,1996
5)Burnett RW, Covington AK, Maas AH, et al:IFCC Method (1988) for tonometry of blood:Reference materials for pCO2 and pO2. J Clin Chem Clin Biochem 27:403-408,1989
6)日本臨床科学会血液ガス・電解質専門委員会:プロジェクト報告 血液ガス測定用常用標準物質―作成手順と精確さの確認および校正―(2005-05-01).臨床化学 34:148-159,2005
7)福永壽晴:血液ガス測定装置の正確さの評価,JJCLA 24:179-184,1999

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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