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検査じょうほう室 〈診療支援〉
遺伝学的検査に関する注意点
著者: 涌井敬子12 福嶋義光13
所属機関: 1信州大学医学部社会予防医学講座遺伝医学分野 2信州大学医学部附属病院遺伝子診療部 3信州大学病院遺伝子診療部
ページ範囲:P.162 - P.165
文献購入ページに移動ヒトゲノム・遺伝子解析研究の進展により,2003年にはヒトのもつ約30億塩基対の塩基配列の一次構造が決定された.原因不明であったさまざまな疾患の責任遺伝子や発症のメカニズムが分子レベルで次々に明らかにされ,責任遺伝子の明らかになった単一遺伝子疾患については遺伝子診断が新たな臨床診断法として診療に用いられつつあり,さらに原因に基づく病態の解明や治療へ向けての研究が進められている.
近年では稀な遺伝性疾患だけでなく,誰にでもなじみのある,高血圧,糖尿病,心筋梗塞などの多因子遺伝疾患や癌も,個々人の遺伝要因が関与していることが明らかになってきた.さらに,一部の治療薬については,個々人の遺伝子多型と薬物反応性の関連が証明され,効果・副作用の判定や適切な投与量決定のために遺伝学的検査が用いられようとしている.あらゆる健康の問題に遺伝要因が関係しているということで,将来は個々人の薬物反応性・疾患感受性などの,いわゆる体質の違いを考慮に入れたオーダーメイド医療が導入され,遺伝学的検査の役割がますます大きくなることが予想される.
本稿では“遺伝学的検査”についての定義と,実施に際して求められる注意点やその理由などを正確に理解していただければ幸いである.
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