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けんさ質問箱
末梢血液像で赤血球破砕があると判断する基準は ?
著者: 金子誠1 常名政弘1 東克巳2
所属機関: 1東京大学医学部附属病院検査部 2杏林大学保健学部 臨床血液学
ページ範囲:P.304 - P.307
文献購入ページに移動末梢血液像で赤血球破砕があると判断する基準はあるのでしょうか.また,赤血球破砕が認められた場合には必ず臨床に報告するべきでしょうか,併せてご教示ください.(神戸市 S.Y.生)
A.金子誠・常名政弘・東克巳
赤血球形態異常のうち,パニック値に相当するものは破砕赤血球(fragmented red blood cells,schizocyte)である.破砕赤血球の成因は,物理的な外力による赤血球破壊であるが,これを認めた場合には,原因検索,治療を急ぐべき病態が潜んでいる可能性がある.この重篤で代表的な病態が,血栓性微小血管障害(thrombotic microangiopathy,TMA)である.TMAでは全身性の血管内血栓により血管狭窄部位で赤血球が破壊され,溶血している病態が存在していると説明されている.代表的な疾患としては,血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura,TTP),溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome,HUS)である.破砕赤血球判定基準については複数存在する(表).しかしながら,検査方法が塗抹標本の目視による視算法のため,客観性・再現性において誤差が大きく,標準化が困難なために統一基準がないのが現状である.破砕赤血球の存在が疑わしい場合には,血小板減少,溶血などのデータ確認や,臨床医とのコンタクトを密にし,病態の把握に努めるべきである.
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