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文献詳細

雑誌文献

検査と技術35巻7号

2007年07月発行

文献概要

オピニオン

HPVワクチンの課題

著者: 川名尚1

所属機関: 1帝京大学医学部附属溝口病院産婦人科

ページ範囲:P.635 - P.635

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 子宮頸癌の95%以上からヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus,HPV)が検出されることからHPVの子宮頸部悪性病変との深い関連性が判明した.HPVは現在100種以上の遺伝子型が知られているが,そのなかで30種以上が性器に感染する.さらに,そのなかでもハイリスクと称される一群のHPV(HPV16,18,52,58,33など13種)が子宮頸部の悪性病変と深く関連していることが判明した.さらに子宮頸部の前癌病変である異形成でも95%以上にハイリスクHPVが検出されること,これらのHPVが感染している正常な子宮頸部を追跡すると感染していない場合に比べて有意に高い頻度で異形成を発症することなどから,現在は子宮頸癌発生の必要条件といわれるようになった.ハイリスクHPVは性交により子宮頸部に感染すると考えられている.しかし,HPVは特別な女性だけが感染しているのではなく,実はありふれたウイルスで若い女性の30~40%は感染しているのである.その大部分は免疫の力で排除してしまうため子宮頸癌を発症することはないが,一部は排除することができず持続感染に移行し,そのなかの一部が異形成を発症し,さらに上皮内癌に移行するのではないかと考えられている.いずれにせよHPVの感染が子宮頸癌発症の第一段階となるので,ワクチンを用いてHPV感染を防げば子宮頸部の異形成を,ひいては子宮頸癌を防ぐことにつながると考えられるようになった.癌を予防する初めてのワクチンということで大きな注目を集めているが,癌を予防するというのは過大表現で,HPVの感染を予防するというほうが正しい.

 既に二つの製薬会社がワクチンを作り治験を開始した.一つはグラクソスミスクライン社(GSK)のワクチンで,子宮頸癌に検出される頻度の高いHPV16と18の二つを用いている.もう一つはメルク(Merck)社製のワクチンで同様にHPV16と18を用いているが,さらに尖圭コンジローマの原因となるHPV6と11も混ぜて作られている.HPVは細胞培養で増やすことができないので,酵母菌や培養細胞にHPV DNAの後期遺伝子であるL1を組み込んで蛋白質(L1蛋白質)を作らせ,ある条件にするとウイルス粒子様の形(virus like particle,VLP)となる.VLPはHPV DNAを欠いているが表面抗原はHPVとほぼ同じと考えてよく免疫原性も高い.L1蛋白質は型特異性がありその抗体も型特異的である.したがって16型で作ったワクチンは16型の感染しか予防できないことになる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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