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文献詳細

雑誌文献

検査と技術35巻7号

2007年07月発行

疾患と検査値の推移

静脈血栓塞栓症

著者: 山本剛1

所属機関: 1日本医科大学付属病院集中治療室

ページ範囲:P.657 - P.661

文献概要

概説

 近年,肺血栓塞栓症と深部静脈血栓症は静脈血栓塞栓症として包括された.肺血栓塞栓症の主たる原因が深部静脈血栓症であること,深部静脈血栓症の半数に無症候性の肺血栓塞栓症が合併していること,以上がその理由である1).静脈血栓塞栓症の発症要因は三つ,すなわち血液凝固能の亢進,血流の停滞,静脈壁の異常(Virchowの三徴)に分けられる(表1).血液凝固能亢進の原因としては,プロテインC欠乏症やプロテインS欠乏症などの先天性血栓性素因,抗リン脂質抗体症候群などの後天的血栓性素因,さらに悪性腫瘍が挙げられる.血流停滞の原因には,エコノミークラス症候群や長期臥床などが含まれ,静脈壁異常の代表的な原因は外傷,手術,カテーテル留置などである2)

 静脈血栓塞栓症では一般的に大量の血栓が存在するため,凝固系および線溶系指標が異常値を示す.臨床の場ではこれらの指標が診断や薬効評価に利用される.例えば,Dダイマーは安定化フィブリンの分解産物であり二次線溶を反映するため,Dダイマーの増加は血栓の存在を示す.しかし,静脈血栓塞栓症以外の血栓性疾患でも増加するため特異的な指標ではない.この背景を利用し,静脈血栓塞栓症が疑われる患者においてDダイマーが増加していなければ静脈血栓塞栓症ではない,といった除外診断法として汎用されている3)

参考文献

1) 高野照夫,山本剛:深部静脈血栓症と肺塞栓症―診断と治療―特に関節リウマチ患者の人工関節置換術との関係について.関節の外科 29:111-116,2002
2) 山本剛,高野照夫:内科的(潜在的)危険因子を識る(特集:急性肺血栓塞栓症―その診断から治療へ).Heart View 10:780-783,2006
3) 川杉和夫:凝固線溶系分子マーカーからの診断(特集:急性肺血栓塞栓症―その診断から治療へ).Heart View 10:729-733,2006
4) 林宏光,吉原尚志,栗林茂彦,他:Multidetector-row CTによる肺血栓塞栓症の画像診断.脈管学 44:754-760,2004
5) Palareti G, Cosmi B, Legnani C, et al:D-dimer testing to determine the duration of anticoagulation therapy. N Engl J Med 26:1780-1789,2006
6) 山本剛:治療法と経過観察指標の読み方.Medical Technology 32:920-925,2004
7) 川合陽子,片桐尚子:凝血学的評価(血液検査を中心とした線溶療法の評価).血栓と循環 12:148-156,2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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