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雑誌文献

検査と技術35巻7号

2007年07月発行

文献概要

トピックス

血清蛋白質異常症のプロテオーム解析法

著者: 戸田年総1

所属機関: 1東京都老人総合研究所老化ゲノムバイオマーカー研究チーム

ページ範囲:P.709 - P.710

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はじめに

 血清蛋白質異常症の検査法として最初に実用化されたのは,Tiselius(チゼリウス)博士によって開発されたU字管式の電気泳動装置1,2)である.わが国においても1950年に創立された日本電気泳動学会で最初に取り上げられた研究テーマの一つが「チゼリウス電気泳動装置による血清蛋白質の分析」に関するものであった.当時は血清蛋白質を解析する有効な手段が他になかったため,悪性腫瘍などに伴う血清蛋白質異常症の検査法3)として注目され,多くの臨床研究が報告されたが,デリケートな光学装置が必要なことや,取り扱いに高度の技術が必要であったこと,多くの検体を検査することが困難であったことなどから,臨床検査法として広く普及するには至らなかった.しかし,チゼリウスの電気泳動装置によって得られた臨床研究の成果が,濾紙やアガロースゲル,セルロースアセテート膜などの支持体を用いた血清蛋白質検査法の開発を促し,全自動セルロースアセテート膜電気泳動装置の開発と普及へとつながった.

 セルロースアセテート膜電気泳動法は,血清蛋白質異常症の検査法として今日まで利用されてきたが,血清中に含まれている数百種以上の蛋白質の変化をわずか5分画のパターンの異常性によって分析することには限界があり,多くの診断マーカーでELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法やレーザーネフェロメトリー法などによる個別分析が実用化されるようになったことなどから,セルロースアセテート膜電気泳動法の重要性は次第に低下してきている.このような状況のなかでヒトの全ゲノム塩基配列の解読が終了し,ポストゲノム時代の新しい蛋白質解析技術として,プロテオーム解析法(プロテオミクス)が登場した.

参考文献

1) Tiselius A:Electrophoresis of serum globulin. Biochem J 31:313-317,1937
2) Tiselius A:Electrophoresis of serum globulin:Electrophoretic analysis of normal and immune sera. Biochem J 31:1464-1477,1937
3) Kato K:On the plasma protein pattern of patients with malignancy, using electrophoresis of Tiselius. Nagoya J Med Sci 28:273-292,1966
4) Wasinger VC, Cordwell SJ, Cerpa-Poljak A, et al:Progress with gene-product mapping of the Mollicutes:Mycoplasma genitalium. Electrophoresis 16:1090-1094,1995
5) Aivado M, Spentzos D, Germing U, et al:Serum proteome profiling detects myelodysplastic syndromes and identifies CXC chemokine ligands 4 and 7 as markers for advanced disease. Proc Natl Acad Sci USA 104:1307-1312,2007
6) Hye A, Lynham S, Thambisetty M, et al:Proteome-based plasma biomarkers for Alzheimer's disease. Brain 129:3042-3050,2006
7) Oh JH, Gao J, Nandi A, et al:Diagnosis of early relapse in ovarian cancer using serum proteomic profiling. Genome Inform 16:195-204,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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