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Laboratory Practice 〈病理●癌取扱い規約の解説と問題点・9〉
前立腺癌取扱い規約
著者: 寺戸雄一1 坂本穆彦1
所属機関: 1杏林大学医学部病理学講座
ページ範囲:P.869 - P.873
文献購入ページに移動前立腺癌は西欧諸国では男性の悪性新生物における死亡原因の上位である.わが国においては死亡原因における前立腺癌の順位は下位ではあるが,2001年に直腸S状部および直腸の癌を抜き,肺癌,肝および肝内胆管の癌,胃癌,結腸癌(前述直腸癌を含まず),膵癌,食道癌に次ぐ7番目となっている1).また,その増加率は高く,発生に食生活やそのほかの生活様式が関与するとされている.前立腺癌はそれらが欧米化しているわが国において,近い将来死亡原因の高位になることが予測されている.
前立腺癌の診断の確定には通常前立腺針生検組織診が行われる.前立腺特異抗原(prostate specific antigen,PSA)によるスクリーニングの結果,ハイリスクグループには前立腺針生検が施行されるが,その件数はますます増加していくと予想される.
「前立腺癌取扱い規約」の最新版は2001年4月刊行の第3版2)である.癌の組織分類法は,初版(1985年)からWHO(World Health Organization,世界保健機関)分類に準拠した高・中・低の分化度を用いている.WHO分類では2002年刊行の第2版3)までは,「前立腺癌取扱い規約」のもととなった分化度分類を用いていたが,2004年刊行の最新版4)ではGleason分類(Gleason grading system)を用いるように提唱しており,分化度分類については既に記載されていない.なおWHO分類は第2版までは前立腺単独で刊行されていたが,最新版では“Tumours of the Urinary System and Male Genital Organs”の一項目として収められている.
「前立腺癌取扱い規約」第3版が刊行された2001年当時,既にGleason分類は事実上の世界標準であったため,「前立腺癌取扱い規約」にも第2版では掲載していなかったGleason分類についての解説も記載されている.しかし,当時のWHO分類を尊重し分化度分類を主として記述している.「事実上の世界標準」と記載した理由は,当時の英文論文では既にGleason分類による記述が標準的であったこと,診療の現場においてGleason分類が導入されつつあったこと,真の意味での世界標準とされるWHO分類では分化度分類を採用していたことにある.
現行の「前立腺癌取扱い規約」の記述方法とは若干ずれが生じてしまうが,既にGleason分類がわが国においても標準的な分類法になっていると思われ,またGleason分類が実際の診療現場で利用されていることを考え合わせ,本稿においても組織分類法はGleason分類について主に記述する.なお「前立腺癌取扱い規約」第3版に掲載されているWHO分類は,既に最新版では記述が削除されているので,本稿では記載しない.
なお,境界病変,治療効果判定については誌面の制約もあり割愛させていただく.
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