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けんさ質問箱
厚みのある細胞診標本を上手に撮影するコツは?
著者: 二村聡1 小畠勝己2
所属機関: 1福岡大学医学部病理学講座 2福岡大学病院病理部
ページ範囲:P.891 - P.894
文献購入ページに移動厚みのある細胞診標本を顕微鏡下で撮影しても満足できる写真を得ることができません.上手に撮影するコツを教えてください.(札幌市Y.K.生)
A.二村聡・小畠勝己
はじめに
光学顕微鏡(以下,顕微鏡)を用いた診断業務に従事している者は,その基本操作を正確に理解し,その性能を余すところなく活用できなければなりません.これは検鏡により得られた情報を臨床側に伝達することを使命としている以上,当然の帰結といえます.日々,臨床側に細胞診断報告書という文書情報を介して細胞診断名と所見を提供していますが,臨床病理カンファレンスで画像情報を介して診断に至る細胞所見を示説する機会も少なくありません.
今回の質問は,細胞診標本の“実践的な写真撮影法”に関するものです.結論から申し上げると,厚みのある細胞集塊の写真を美しく撮影することは至難の業です.ルチーンの検鏡下では少々厚い細胞集塊であっても,光量を上げたり,コンデンサー上下動ハンドルを操作したり,開口絞り環を開放または絞ることによって細胞集塊の内部や辺縁を観察し,それなりに評価することが可能です.しかし,厚みのある細胞集塊を見た目どおりに撮影するのは容易ではありません.これを低倍率で撮影すると,だいたい図1-a,bのような写真に仕上がります.見た目どおりに撮影できないのでいらだつことさえありますが,少しでも理想的な写真を撮影するためのコツを顕微鏡の基本操作を踏まえながら解説します.なお,近年の写真システムは銀塩からデジタルへと予想をはるかに超えるスピードで置き換えられつつあります.この点を配慮し,本稿ではデジタルカメラで撮影した写真のみを掲載しました.
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