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文献詳細

雑誌文献

検査と技術36巻11号

2008年10月発行

文献概要

病気のはなし

放線菌症

著者: 金川昭啓1 国広誠子2

所属機関: 1山口県立総合医療センター歯科口腔外科 2山口県立総合医療センター中央検査室

ページ範囲:P.1208 - P.1212

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サマリー

 放線菌症は嫌気性~微好気性の放線菌属の細菌により引き起こされる感染症で,主に健康な成人に発症することが多い.その臨床病型は口腔顔面頸部,胸部,腹部,骨盤,播種性などに大別され,口腔顔面頸部が全体の約60%を占めている.放線菌はヒトの口腔,咽頭,消化管および女性生殖器などの粘膜に常在し,口腔に最も多い.主要な病原菌は,A ctinomyces israeliiとA. gerencseriaeである.放線菌症の診断は細菌学的になされるべきであるが,多くの場合,臨床的あるいは膿汁や肉芽組織内に菌塊(硫黄顆粒)を病理組織学的に証明することによりなされており,放線菌の分離・同定に基づくことは少ない.放線菌の培養陽性率は10~50%以下と低いが,グラム染色でフィラメント状のグラム陽性桿菌を多数認める菌塊や膿汁を10日~2週間嫌気培養すれば分離される可能性が大である.治療では抗菌薬療法と外科的処置が不可欠である.抗菌薬としては現在でもペニシリン系薬が第一選択薬である.再発傾向が大きいため長期にわたる抗菌薬療法が必要である.

参考文献

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10) 金川昭啓,中村功,国広誠子,他:放線菌属の分離状況と薬剤感受性の検討.日本嫌気性菌感染症研究 31:130-135,2001

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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